なんとか最後にたどり着いたが

 ずっと読むことができずにいた黒川創さんの小説「明るい夜」でありますが、

残りが少なくなっていたこともあって、えいやっと読み続けることになりました。

200ページくらいの中編小説でありまして、いっきに読めても不思議ではない

のですが、当方にすれば、すこしはなじみの京都が舞台になっているというのに、

ちょっと苦労したことです。

 発表は2005年で、作中の時代も平成15年くらいでありますのですから、

同時代のことを書いていることになります。

 全体にぴんとこなかったのでありますが、思わず身を乗り出して(座って読ん

でいたので、乗り出したりはしなかったか)作中に入りこんだのは、登場人物の

若い女性がパン屋さんでアルバイトをするエピソードであります。

 具体的なパン作り作業についての記述があるのですが、これは週一パン職人の

当方にも参考になることでありました。

「つまり10㎏の小麦粉(これは強力粉)を、水温8℃、6750㏄の仕込み水

でこねる。これを二セット、という意味である。水も目方、つまり重さでいうの

は、パン工房の習慣であるらしい。

 業務用のミキサーでこれらをこねると、室温、摩擦熱なども加わって、生地の

温度はだんだん上がる。こね上がったとき、それが27℃前後になるように、清

田さんは仕込み水の水温を加減する。毎日のパンに同じ食感を保つには、水の分

量も、その日の湿度や季節によって微妙に増減させるらしい。」

 当方のパンこね機は、一度に800グラムくらいの粉ですから、業務用の1割

にもならないのですが、粉と水の比率などは参考になるのですね。当方のパンは、

通常は粉に対して60%でありますので、あと5%ほど増やしてもいいというこ

とで、次は65%でやってみようかな。(当方が使う粉は全粒粉ですから、それ

の割合も水分量に影響することで)

 パン屋さんのエピソードがもっとでてきたら、よかったのにです。

 これまで黒川創さんの本は、鶴見俊輔さん関係などを何冊か読んでおりました

が、小説ははじめてでありました。次にどの小説を読むか決めてはいないのです

が、池澤夏樹さん、小林信彦さんに続いて、その小説作品にはあまりなじむこと

のない文筆家ということになるかもです。