二月も本日でおしまいで、ほんと二月はあっけなく終わることであり。
図書館から借りている本の一部が期限が過ぎて、これを戻してまた借りる
ことになりです。そのほかで、なにかめぼしいものはないかと思って棚を
みておりましたら、いつもでありましたら閉架書庫にあるものを出してきま
したので借りてくださいと張り紙がついていました。
せっかくだから何か興味をひくものはないかと見ておりましたら、加賀乙彦
さんの「読書ノート」という本が目に入りました。(古い本ですが、書影はで
てくるかな)
一見してわかるとおりでありまして、装丁は田村義也さんです。
1984年5月の本ですから、40年近く前の本となりです。書評集ですが、
後半に置かれたのは精神医学についての書評ですので、これは珍しいことで。
こういう本があることは知りませんでした。
この時代は、短編全集とか、ノートとタイトルのついたものなどを潮出版社
から刊行していたのですね。1月に亡くなって、行きつけの図書館では小さな
追悼コーナーを作っていたのですが、そのときは小説がメインで、こうした本
はならんでいなかったようです。
この「読書ノート」の残念なのは、これに収録の書評の初出掲載についての
情報がないことであります。加賀さんの書評の切り抜きをそのまま活字にして
本にしたというもので、ちょっとさびしい。
なかを開いてみていたら、次のようなくだりがありました。
「彼は時代の文学の先頭に立ち、その時代のもっともアクチュアルな文学や
思想と全力をつくして係わり、対決してきた。サルトル、ヘンリー・ミラー、
ノーマン・メーラー、野間宏、金芝河、エリクソン、バフティン、ユング、
山口昌男の名が、彼の文学と同時に存在し、響き合っていた。彼の小説は、
時代と交響しながら、次の時代を透視する力業であった。」
これは「表現する者」という本の書評であります。この本の刊行は1978年
だそうで、ここにあげられている名前を見ますと、彼というのがどなたである
かわかりますですね。