そのうちなんとか

 さて、どのようにして入手しようかと考えることになりです。

 先日に林哲夫さんがブログで言及していた同人誌「VIKING」860号 中尾務さん

の「小沢信男リトルマガジン」が掲載されている号のことでありますよ。

同人誌というのは、よほどのものであってもなかなか一般の書店には並ばないもの

でありまして、発行所にその号だけを分けていただきたいというのも、ちょっと

気がひけてです。(まあ、維持会員になるという方法での入手はあるのですが)

 その昔に、京都の三月書房には「VIKING」が販売されていたことがあるように

も思いますが、それはずいぶんと昔のことであります。

 なんてことを思いながら、これじゃとても小沢信男さんの熱心な読者とはいえ

ないよなと思うことです。

 そんなことを思いながら、偏執的な収集者である西村賢太さんの藤澤清造

文章が掲載されている雑誌を入手するための旅行の様子が書かれた小説を手に

することです。

 新潮文庫「廃疾かかえて」に収録の「瘡瘢旅行」にある、有名なくだりです。

送られてきた古書販売目録に「藤澤清造」の未見の文章があるのを目にした、

北町貫多はいてもたってもいられず、出品元の岐阜の古本屋へと出向いて入手の

お願いをするという話です。

「最後の遺稿、とは絶筆と云う意味合いならば額面通りには受け取れないが、

しかし何んにせよ、私自身がまだ未見だった清造作品が、今、目の前にある事実

にはどうにも胸を締め付けられるような、せつない思いであった。・・

 私は念の為、その店主に、もし抽選洩れとなったときにはこの商品掲載部分と

目次と奥付、及び表紙、裏表紙のコピーを、同じ売価で譲って欲しい旨を申し述

べ、店のコンクリートの床に跪くと、女が顔を背けたのも一切かまわずに土下座

した。無論、これだけ言い、それだけの非常識なことをすれば、おそらく先方も

私に廻すより仕方なくなるであろう一種の恐怖心の芽生えを、充分計算に入れた

上である。」

 清造関係の資料があれば、日本全国の古本屋さんは、目録に載せる前に連絡を

くだされば言い値で買いますからねでありまして、目録などに掲載したら、ひど

く厄介なことになりますよと言っているようなものです。

 これって怖い話でありまして、間違って抽選であたってしまったら、そのあと

あとまで、誰が入手したのですかと聞き出そうとするのでありましょうね。

 当方は自称鷹揚な常識人でありますので、そのうちなんとかなるでありましょ

うよと、関西に住むエージェントに入手の依頼をしたのであります。忘れた頃に

は入手したとの連絡が入るでありましょう。