偏愛作家でありましたか

 涼しい当地としては珍しいことに、本日は最高気温が31度を記録しました。

あとすこしで32度に届きそうでしたので、これは暑いわ。

 最高気温を記録した時間帯には室内でトレーニングに励んでおりました。室内

は冷房はなしで、換気のために外気をとりこんでいましたが、ひどく暑いという

感じはしませんでした。あちちとなったのは、トレーニングを終えて車に乗り込ん

だときでありますが、こりゃたまらんであります。

 幼児を車のなかに放置して、パチンコなどをしていて、その間に子どもはぐった

りとして亡くなったという話を聞きますが、本日などの気温でありましたら、当地

でも起こりうることです。

 自宅に戻って、ウトウトとしながら西村賢太さんの「蠕動で渉れ、汚泥の川を」

を読むことにです。

 この作品での主人公北町貫多さんは、18歳だそうです。貫多さんは小学校の

頃から読書家でありまして、特に父親と別れてからは角川文庫などで横溝正史

どに耽溺するようになりです。恐るべき早熟少年なのでありまして、貫多の読書

遍歴というのは、西村作品の読みどころの一つであると思われます。

 この「蠕動で渉れ」では、生活に余裕のないなかで、えいやっと買うのは、

出帆社版の「大坪砂男全集」でありますね。二冊本でありましたが、貫多少年が

買った時にはゾッキ本となっていて、どちらも7百円であったそうです。

 この版の「大坪砂男全集」は、その後入手困難となって、高額になるのですが、

これに添えられた貫多のコメントであります。

「この作者のものは、文庫アンソロジーに収録されていた『天狗』と言うのを一

篇読んだことがあったが、無駄な体脂肪の殆どない、まるで鋼の筋肉のみで構築

されたような文章にはひどく驚き、茫とした覚えがある。極めて短い作であり、

冷静に考えるとプロットもトリックも随分と無茶なものでありながら、おそらく

はあの異様な文体のせいで、それがえらく魅力的な、面白い作品だったとの不可

思議な印象も残っている。」

 こういう読書感が、小説のなかにさらっと盛り込まれているのが、西村作品の

魅力でありますね。

 「天狗」という作品は、当方はなんともうまく読むことのできないものであり

まして、この西村さんの文章に導かれて、「天狗」を読んでみることにいたしま

しょうです。

 そういえば、西村さんの偏愛作家についての本は、もう刊行になっているはず

であります。これものぞいてみたいものです。