なじかわ知らねど

 本日は月曜日でありますので、パン作りの日となります。昨晩から用意した

酵母種を、朝に粉に混ぜてこねて発酵させることになりです。 

 前回に引き続きで、一次発酵はそこそこなのですが、二次発酵で上がらない

ことに苦戦することになりです。前回はあきらかに一次発酵に時間をかけすぎ

て過発酵となってしまったのですが、本日はそんなこともなくて、これはうま

くいくでしょうと二次発酵にはいると、思うようにあがらないことにです。

 この理由がよくわからずでありましてまったく発酵の世界とは不思議なこと

であります。もともと自分のところで消費するのでありますので、メッコ飯の

ようなパンでありましても、とにかく食べるのであります。

 本日は三種類で2キロくらいの粉を使っていましたので、焼きの時間には

オーブンの前に椅子を置いてすわっていました。こういうときには昨日に話題

とした高橋英夫さんの「京都で、本さがし」がもってこいであります。

 この本は、近畿大学文芸学部に勤務していた頃に書かれた文章を収録して

いることもあって、大阪に関する話題があちこちにあることです。

「極言すれば、本は新潮文庫の『梶井基次郎集』一冊があれば足りると言い

えたような時代が私にはあった、と書いた。梶井の孤独と詩情は青春の結晶

に思えたのだ。三十そこそこで夭折した梶井は、私の青春の神だったかもしれ

ない。 

 私が大阪を尊敬するのは、梶井基次郎が大阪生れの大阪人だったからだ、と

言ってもいい。」

 ここまで言われると梶井基次郎も本望でありましょう。近畿大学に勤務した

のも梶井の生地に近いということもありでしょうか。

 ということで、近畿大学での授業の様子を描いた文章に行き当たりました。

「午前十時五十分、定刻に教室に行くと空っぽだった。横殴りの雨でたしかに

悪天候なのだが、学生たちもそろそろ中だるみなのだろう。誰も来なければ

自然に休講なのだが・・、と思いながら待っていると、一人来た。全員揃って

も五、六人なのである。

 とにかくテキストをきちんと読むのが基本ですよ、と学年のはじめに言って

ある。今日は折口信夫の未完の小説『神の嫁』をやる予定である。これまで

折口信夫の『身毒丸』を読み、それとの関連で後藤明生さんの作品『しんとく

問答』を読んだり、ビデオ映像で熊野の田楽踊りや四天王寺聖霊会の情景を

見たりしてきた。ここは大阪、そのうえ俊徳丸が高安の里から四天王寺に通った

という街道にちなんで、俊徳道という近鉄電車の駅も近くにある。まさに地元

なのだ。」

 折口信夫というと、高橋さんのデビュー評論でありまして大学でも取り上げて

いたということが、この文章でわかります。後藤明生さんの「しんとく問答」も

大阪に住まなければ生まれなかった作品でありまして、まさに大阪の磁場の強さ

であります。