このところ立て続けに入浴中のアクシデントの話をきくことになりです。
おひとりは、一人暮らしとなっていたかっての仕事の先輩でありますが、ご家
族が訪ねたところ、お風呂で入浴中になくなっていたとのことです。お酒でも
呑んでいたのかと思いましたら、最近は酒はやめていたとのことで、それでも
であります。
それから数日して知人が温泉の露天風呂で入浴をしていたら、すぐ近くで
入浴していた方が、気がついたら正体をなくしていて、頭が湯のなかに沈みか
けていたとのことです。これは危ないということで、他の人と一緒に抱えて
お湯のなかから引き上げたとのことですが、そのままであれば命が危なかった
のでありましょう。こちらの方は、泥酔して入浴ということですから、これは
ひどくリスクが高いことです。
検索をかけてみましたら、交通事故で亡くなる人よりも入浴中に亡くなる人
のほうが倍も多いのだそうで、どうりで当方のまわりでも交通事故で亡くなった
よりも入浴で亡くなった方のほうが多いことです。
そんなことを感じながら、最近手にしている足立巻一さんの「虹滅記」には
次のようなくだりがありました。
「夕方になると、敬亭はわたしをつれて銭湯にでかける。
なにか、むし暑い日であった。
わたしは湯船のふちに腰かけ、じいさんは湯につかっていた。と、突然、じい
さんは沈んだ。あっと叫んだようでもあり、じいさんはもぐりを見せてくれたの
だとぼんやり眺めていたようでもある。大声がおこって、若い衆がじいさんを引き
あげ、板の間に寝かせたような気がする。そのとき敬亭はもう死んでおり、わたし
は孤児になっていたのだ。」
足立巻一さんが、自分を育ててくれた祖父とのことを記した「虹滅記」で、その
祖父が亡くなったシーンとなりますが、その時祖父は六十四歳で、足立さんは八歳
でありました。
祖父との生活もたいへんでありましたが、亡くなってからはそれこそ親戚の間を
たらいまわしでありまして、よくぞグレることなく成長したものであります。
入浴するときには、気をつけなくてはいけないというのが本日のお話であります。