かなり残念なことであり

 昨日に引き続きで津野海太郎さんの「かれが最後に書いた本」に関わる話題

であります。昨日は「波」4月号に掲載されている佐久間文子さんの「かなし

みと、不思議なおかしみ」という文章から「二十代からのつきあいだった作家

小沢信男さん、盟友平野甲賀さんを追悼する文章は、淡々と書かれていて、

胸に迫る。」というくだりを紹介したのでありますね。

 佐久間文子さんでありますから、わかっていて当然でありますが、佐久間さん

は上のところに続いて、次のように書いていました。

池内紀阿奈井文彦古井由吉橋本治和田誠、と亡くなった人の名前を

挙げて、『なんで私がこのリストに入っていないのだろう』と書く津野さんの

文章には、かなしみと不思議なおかしみの両方を感じる。」

 そうなんですよね、昨日の引用では省略しているのですが、津野さんの今回

の本は樹木希林さんが亡くなっての記憶からはじまって、WEB版では記してい

ない(別のところで発表した)、小沢信男さんと平野甲賀さんという昨年3月

に相次いで亡くなったお二人についての文章で締めているのでありますよ。

 それはないだろうと思ったのは、今朝の新潮社新聞広告のコピーですね。

「友だちはあっちの世界に仲間入り でも、本を開けばまた会える。

 樹木希林鶴見俊輔橋本治加藤典洋古井由吉坪内祐三平野甲賀・・」

 樹木希林さんで始まって、平野甲賀さんで終わっていて、そのあとには・・と

続いていて、他にもいるよとほのめかしでありますが、当方のような小沢信男

さんのファンには、コピーから小沢さんの名前を外すというのは、このコピー

を作った人は、わかっていないこととカチンときたのです。

 本日に書店へといきましたら、この本がありまして、帯がついており、その帯

も新聞広告と同様で、小沢信男さんの名前はなしでありました。

 佐久間文子さんが坪内さんのことをあげていないのあげていないのは、当然

として、樹木希林で始まり小沢信男平野甲賀で終わるという切り取りのなか

に、津野海太郎さんの生涯が凝縮されていると思うのですよね。

 まさか、このコピーを作ったひとが津野さんの「おかしな時代」を読んでい

ないとは思いがたいのでありますが、それにしても、このコピーで小沢さんの

名前を外すというセンスがわからないことであります。 

 小沢信男さんは、人を押しのけて俺が俺がの人ではなく、ご本人が「人は

生きているように死んでいる」という名言を残しているように、徒党を組む人

ではありませんでした。小沢さんもまた「生きていたときのように、死んでい

る」ということですね。(そういえば、昨年末に新聞がまとめた今年亡くなっ

た人というところにも小沢さんの名前がなかったものね。)

 まあ小沢さんに言わせれば、そんなことどうでもいいやということになるの

でしょうが、ファンとしては一言いわずにいられないことで。