悪の権化であっても

 先月に始まった隣国がそのまた隣国に侵攻した事態は、たぶん行くところ

まで行かなくては収まらないのでありましょう。攻める方は半端な気持ちでは

やっていないぞという意思をあらわにしていますので、この前では希望的な観

測というのは通用しませんですね。

 正規の手続きを経て現在の地位を保っているのでありまして、21世紀の絶対

者というのは民主的な手段を経るというのが通常のようであります。

そういえば、日本にもナチスのやり方を学んだ(?)ほうがいいといった有力

者もいたように思いますが、これからはロシアに学ぼうということになるので

しょうか。

 ロシアにも現在のやり方に反対している人は多いのでありましょうが、その

抑え込みがどんどんと厳しくなるようで、これは旧ソ連の流儀でありましょう

か。

 そんなことを思いながら、図書館から借りている「アレクシエーヴィチとの

対話」を手にすることです。

 隣国の絶対的指導者は、国民の圧倒的な支持を得ているということを背景に

侵攻を進めているのでしょうが、国民のなかには旧ソ連時代の国家のあり方へ

戻りたいと思う人もいるのでしょう。(そういえば、USAには「わが祖国」と

いうフォークソングがありますが、それにならってロシアの指導者が歌うと

すれば、以下のようになるのでしょうか。

This land is your land,
This land is my land,
From Ukraine
To the Сахалин Island,
This land was made for you and me. )

 NHKの番組スタッフがアレクシエーヴィチとの取材を始めたのは2000年に

はいってまもなくのことで、そのころの対話でアレクシエーヴィチは、次の

ように語っています。

「最近の出来事ですが、数々の世論調査を見ても、プーチンに対する期待の

ようなものが人々の間に広がっています。再び『強い力』への期待。

再びの『偉大なロシア』という権力の新たなスローガン。それと同時に、

人々の心の中に、再びの『恐怖』がゆっくりと忍び込んでいるように感じら

れます。とりまきの政治家や知事、『小さな人々』の顔にもそれが見えます。」

 このときから20年くらいがたっているわけですから、権力者としては、

ずいぶんと時間をかけて、この局面をつくりだしたということで、今となって

は誰にも止めることができないということですね。