たった二杯で

 本日から大相撲初場所が始まりました。コロナで休場したり、不祥事で出場

見合わせがあったのですが、無事に初日を迎えることができ、関係者はホッと

していることでしょう。

 我が家でもTVで相撲見物をしながら、食事の時に久しぶりでビールをあける

ことになりです。小さな缶ビールでグラスに二杯いただきましたら、すっかり

酔っ払ってしまい、しばし居眠りをしておりました。

 起き出してから、三浦清宏さんの「運命の謎 小島信夫と私」を手にすること

になりです。これを読んでみるまで三浦さんのものは、読んだことはなく、この

本を手にしたのも三浦さんが小島信夫さんを文学の師匠といっているからです。

小島信夫さんの後期の作品群はほんと小説からの逸脱が読みどころでありまして、

これを楽しむというのは、相当な小説の読み巧者となります。

 なんといっても坪内祐三さんも「別れる理由が気になって」という本をだすぐ

らいでありますからね。

 長編でわけがわからない小説が好きという人にとっては、小島信夫さんの

「寓話」、「菅野満子の手紙」そして「別れる理由」」は大きな山であります。

(同じくわけのわからない小説を発表している後藤明生さんよりも、小島信夫

さんのほうが、ずっとよみにくい。)

 今回の三浦さんの本を読んだら、すこしは小島信夫さんの本が読めるように

なるかなという期待をこめてです。

 本日に読んだところには、次のようなくだりがありました。

「菅野満子の手紙」と「寓話」についてというところであります。

「現在の、もうすぐ九十歳になんなんとする(読んだ当時)私の目を通して見た

ということです。

 それで今の私から見るとどうかと言いますと、

 『小島さん、やめておいた方がいいですよ」と、声をかけたくなります。

 何をやめたらいいかというと、まず、書きながら考えたことを、そのまま活字

にする、ということですね。」

 こうしたことが許された作家は小島さんだけであって、何よりも掲載される

雑誌編集者と濃密な関係がなくててできないことと続くのですが、こうした作品

が成立したことも含めて、坪内さんは気になっていたのかな。(坪内さんの本は

確保できておりません。)

 この本では三浦さんが芥川賞を受けてときのことが書かれていて、これが発表

されたのが福武書店海燕」誌であって、福武にすれば、最初の芥川賞というこ

とで、社をあげて喜んでもらえたとありました。なるほどな。