下目黒といえば

 図書館から借りた小林エリカさんの「最後の挨拶」を読んでおりました。

小林エリカさんは1978年生まれとのことですから、生年は当方の息子と同年

でありますが、父上(小林司さん)が再婚した後に生まれた子ということも

ありまして、父上49歳の時の子ということになりです。

 「最後の挨拶」は、家のこと、父のこと、ホームズとエスペラントのことな

どが短いパッセージの文で綴られています。あれこれと説明を施すのではなく、

イメージでつないでいこうという試みもみられます。

それにしても祖父や父を通して歴史をたどることになるのですが、小林エリカ

さんはあっという間に明治まで遡ることが可能となるようで、同世代ではこれ

だけ明治などの人を身近に感じることができるというのは、稀でありましょう。

 父は精神科医である上にホームズ研究家で、母もホームズを翻訳しているの

で参考資料などで家の中は溢れかえっていたとあります。考えようによっては

ゴミ屋敷のようにも受け止められそうでありまして、これが高齢になった時に

どういうことになるかでありますね。

「夕方から嘔吐を繰り返した末、父は洗面器を抱えたまま二階の部屋で意識を

失ったのだった。・・・

 救急車はすぐにやってきたが、玄関から廊下にかけて本が積み上げられすぎ

ていたので担架を運び入れることができず、やむなく消防車まで呼ばなければ

ならなかった。

 人間がいまこの瞬間死にかけているというのに、消防たいいんがわざわざ

やってきてまずやらなければならないのが本を掻き分けることだなんて、

馬鹿げている。」

 これを読みますと、世間のほとんどの蔵書家の人たちは、自分のところはそこ

まではひどくないぞと、少しホッとすることでありましょう。

こうして救い出された父上は、板橋にある大学病院(最近建て替えで話題になっ

ているところと、もう一つあり、どちらかな。)

 この本を読んで一番喜んだのは上のくだりのほか、家の中をほとんど片付ける

ことがないというところでありました。こういうのを見ますと元気づけられる

ことです。

 もう一つは、作者とも重なる主人公リブロの住まいについてであります。

「リブロは吉祥寺から下目黒へ引越し、派遣で事務の仕事をはじめた。」

 そうか主人公さんは、下目黒に住んでいたのか。ということで、下目黒のどこ

らあたりかということをチェックしてみたのですが、これが判然とせずです。

アパートとありますので、当方が東京時代に住んでいた辺りではなかったのかな

と思うことでありました。