ついつい長居することに

 このところ入厠読書は、川本三郎さんの「日本映画を歩く」(中公文庫)

であります。1998年に元版がでて、2006年に文庫化されています。

元々は雑誌「旅」に連載された紀行文でありまして、全部で映画13作品の

ロケ地を訪ねています。

 一つの作品に対して20ページ弱でありますし、川本さんですから面倒な

理屈をこねることもなく、とっても読みやすいことです。

まさに入厠読書には最適でありまして、読んでいましたら、楽しくてついつ

い長居をしてしまいそうです。とりあえず、一章を二日くらいかけて読むこ

とで、すこしでも長く楽しみが続くようにいたしましょう。

 先日に見ていたところに、次のようにあって驚きました。

 「ここに泉あり」という群馬交響楽団の活動を取り上げた昭和30年公開の

映画に関しての章にあったものです。

「最後に個人的なことを。私の義兄(次姉の夫)は地味な俳優をしている。

富田浩太郎という。昭和29年当時、劇団民藝に所属していた。そしてこの

名作『ここに泉あり』に端役(群響のチェロ奏者)で出演した。子どもながら、

うれしい出来事だった。それだけにいっそう、この映画と、それがロケされた

群馬県の山奥の村への想いはいまも強い。」

 驚いたのは富田浩太郎さんが義兄とあったところです。当方が子どもの頃

には富田浩太郎さんは子供向けのドラマに学校の先生役ででていたように

思います。地味というか、真面目な役が似合う人でありました。そのあとも

役者さんを続けていたようですが、その頃はあまり当方が見る番組にはでて

いなかったようです。

 なんとなく、川本三郎さんにふさわしい役者さんでありますこと。