傲慢な読者であり

 先日に新刊本屋へと立ち寄ったときに、今月一番の楽しみ文庫本である

矢川澄子ベスト・エッセイ「妹たちへ」を購入することができました。

矢川さんには、これまでも文庫となった本はありますが、このような編集の

ものは初めてで、矢川澄子への入門書となりますね。

 当方といえば、矢川澄子さんの本を集めていることだけでいえば、年季が

はいっていまして、本を手にして目次を見ただけで、すっかり本を読んだ気

分となっている、どうしようもない傲慢な読者でありますね。

 今回の文庫にどのような文章が収録されているのだろうなんて、予想した

こともあるのですが、早川茉莉さんの区分したジャンルわけと分野ごとの

選択を楽しむことにします。

 ちなみに、早川さんは、矢川さんのエッセイの分野わけを、次のようにして

います。

 第一章  あの頃

 第二章  存在の世界地図

 第三章  高原の一隅から

 第四章  不滅の少女

 第五章  卯年の娘たち

 第六章  兎穴の彼方に

 「あの頃」と「存在の世界地図」というタイトルのエッセイはないのです

が、第三章以降はすべてエッセイのタイトルが章の題となっています。 

 「あの頃」は回想的な文章、「存在の世界地図」は外国文学、「高原の

一隅から」は黒姫山麓で書かれたエッセイとなります。「不滅の少女」は

アリスに代表される少女もので、「卯年の娘たち」は森茉莉さんと自分の母

など卯年(ということは1903年生まれ、当方よりも48歳年長です。)

生まれの女性とアナイス・ニンだから「父の娘」について。そして最後の

「兎穴の彼方は」、健気なお使い神である少女についてですね。

 どこまでいっても、矢川さんのことを思うとちょっぴり哀しいことになり

です。それは、彼女の生きた時代と育った家庭ということにも関係があるの

でしょうね。

 この本を手にして矢川さんの文章を初めて読まれるという方がいらしたら、

当方は、矢川さんが亡くなる数ヶ月まえに朝日新聞に寄稿した「いつもそば

に本が」を読むことをおすすめしたいな。

 たぶん、まもなく自分は亡くなるということを感じながら、それまでの人生

を振り返った、短い文章でありますが、ズシンとひびくことです。

矢川澄子ベスト・エッセイ 妹たちへ (ちくま文庫)