文庫の新刊

 先日に今月の文庫新刊を二冊購入することになりです。新刊の文庫を二冊も

買えたのは久しぶりでありますか。どちらも当方の好きな内幕ものであるのかな。

買うことのなかった一冊は古山高麗雄さん「人生、しょせん運不運」の文庫本で

ありました。これは元版を持っているので、今回はパスです。

文庫 人生しょせん、運不運 (草思社文庫 ふ 4-1)

文庫 人生しょせん、運不運 (草思社文庫 ふ 4-1)

 

 買った一冊はこれと同じく草思社文庫に入ったものです。草思社文庫は2011年

2月が創刊とのことですから、今月で10周年となるのですね。文芸社の子会社と

なって、それなりに地道に文庫として歩んでいるようなのはめでたいことです。

 北村太郎さんのことは、これまでまったく話題としたこともなしで、ほとんど

詩も文章も読んだことがないはずです。戦後詩にあまり関心のない当方でありま

しても「荒地」に参加した詩人の名前は知っておりまして、その人たちがけっこ

う尖った生き方をしていたことは承知しておりました。

 この方たちは、ほぼ当方の父親世代でありますが、当方にとって父親世代を

代表する知識人は加藤周一さんでありまして、そのほかにはあまり父親を必要と

しなかったようであります。

 まったくもってとんだ勘違いでありますが、よちよち歩きの時には、そうした

気持ちになるようです。

 本日に北村さんの文章を読んでいましたら、次のようにありまして、今であり

ましたら、すこし冷静にこれを受け止めることができるようにも思いますが。

北村さんはあれこれの仕事を経験したあとで朝日新聞に入社して、校閲部から調

査部とあまり日の当たらない場所で仕事をすることになりです。その時のことを

回顧してのくだりです。

朝日新聞ではいろいろいやなことがあった。・・紅衛兵が出てきたとき、毛沢

東暗殺クーデタに失敗して飛行機で逃亡を図って事故で死んだ林彪の事件、これら

一連の出来事がおきたとき会社のトップの姿勢がおかしいと感じた。当時、加藤

周一が論説顧問になっていたのだけれども、校閲部長だったぼくは編集局長に、

なぜ加藤周一などを起用しているのかと詰め寄ったら、『あの人はすごく外国語

ができるそうだよ』といわれたので、呆れてものもいえずにひっこんでしまった

覚えがあります。・・会社員生活は結構楽しかったけれど、会社の方針は一貫して

楽しくないことのほうが多かったですね。」

 たぶん、今になって当時の朝日新聞の記事などを読み返してみましたら、あら

まと思うことが多いのでありましょうが、その時にはそんなこと思わなかったけど

も、北村さんは当時そのことを感じていたのですね。

 新刊文庫で購入のもう一冊は、次の機会にです。

神保町「ガロ編集室」界隈 (ちくま文庫)

神保町「ガロ編集室」界隈 (ちくま文庫)

  • 作者:高野 慎三
  • 発売日: 2021/02/13
  • メディア: 文庫