生まれた人、死んだ人

 いつかもどこかで記したように思いますが、生きているうちはお誕生日

で思い出され、亡くなったら祥月命日で思い出されることになりです。

 本日の朝の番組を見ていたら、その番組にレギュラーで出演している女性

が本日がお誕生日とかで、お祝いされていたということです。そうかお仲間

がまた一人見つかったかであります。

 その昔でありましたら越路吹雪さん、奥村チヨさんという名前があがり、

最近では安藤サクラさん、田中哲司さんのお誕生日が話題となるようです。

この日にお生まれの作家さんでなじみのある人は、あまりいないのですが、

地縁でつながる馳星周さんがこの日とのことで、これは初めて知りました。

 本日に亡くなった方というと、今も図書館から本を借りている古井由吉

さんがそうでありますし、もうひとり津島祐子さんがそうでありました。

 机の脇に積まれている本の山のなかに、津島祐子さんの本が何冊か入っ

ています。とんでもない父親のものは、そんなに読みたいと思いませんが、

津島さんのものは気になることです。

 山からひっぱりだしてきた「アニの夢 私のイノチ」にあった「忘れて

はならないこと」という文章を読むことになりです。

 書き出しは「昨年のノーベル文学賞は、トニ・モリスンというアメリ

黒人女性作家に与えられた。」となります。(トニ・モリスンさんもお生

まれは2月18日でした)

アメリカ黒人の歴史においても、アメリカインディアンの歴史でも、ホモ

セクシュアルの人権運動においても、多くの人が殺されつづけ、卑しめられ、

それでもあきらめずに一歩一歩、運動をつづけ、発言をつづけ、具体的に

細かな差別も訂正しつづけてきた、そのすべての行為の結果として、日本に

いる私たちも、たとえばトニ・モリスンというアメリカ黒人女性作家を奇異

な思いで受けとめなくなっている。」

 1994年に発表された文章ですが、上のところを受けて、最後はつぎのよう

に結ばれます。

「日本の社会でもむろん、同様の経過をたどり、さまざまな変化を遂げてい

る面がある。女性に対する認識の変化ひとつをとっても、それを促してきたの

は、多くの女性たちの模索のひとつひとつだった。このことをおぼえておかな

ければ、日本に住む私たちは現在の多くの問題について、ただ無力に嘆き合う

ことしかできなくなる、と念のために、ここで言っておく必要があるのかも

しれない。」

 津島さんは2016年にお亡くなりになりましたので、USAとんでも大統領の

誕生を見ることはなかったのですが、ここはひとつ女性を据えて目くらまし

してやりましょうなんてのも論外ということですね。

P+D BOOKS アニの夢 私のイノチ

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