一人ではだめでも

 本日の新聞夕刊を見ていましたら、女性たちがやっている読書会のことが

紹介されていました。

 当方は読書会というのには参加したことがないのですが、戦後の図書館活動

のなかでは読書会結成と、それへの貸し出しというのは一つの運動であったの

ですね。読書会の全盛期というのは、今から半世紀は昔のことでありましょう。

職場サークルや地域での文化活動としての同人誌とか読書会とかは、それこそ

戦後民主主義を推進する集団でありましたでしょう。

 当方の住む町にはすでに50年近くも継続して活動している読書会があります。

もともとは小学校PTAサークルから発生したものですが、メンバーは高齢化して

いますので、若手(といっても70歳以上)の男性を加えて、今も月に一度の例会

をやっています。主力のメンバーはそろそろ90歳に手が届きそうでありまして、

女性たちの持続する志であります。

 そんなことを思いながら、本日夕刊をみましたら、ここで紹介されていた読書

会は、なんと「埴谷雄高『死靈』を読む会』というのだそうです。

メンバーは主宰の女性(84歳)ほか男性一人を含む全員で6人だそうです。読書

会の写真には女性ばかり5人がテーブルを囲んで「死靈」を読むところが写って

いました。

 このメンバーで「死靈」を1年余りをかけて読了したのだそうです。このような

話を聞きますと、この読書会の皆さん(特には主宰の女性)を尊敬してしまうこ

とです。

 それまでも何かを読んできての結果として「死靈」であるようにも思うのです

が、それにしてもこの作品は、相当に難易度が高いと思われますからね。

 当方は、この不思議な小説のことは、高校の時かに「現代文学の発見」に幻の

小説が収録されたとあったのを見て、その存在を知ったのですが、読んでみよう

かと思ったのは、それから十年近くもたって、集英社かどこかの安価な文学全集

の一冊に収録された時でありました。

 これはまったく歯がたたずでありまして、それからはどのような「死靈」の版

がでても、手にすることはなくて、今にいたっています。

おおそれなのにであります。普通そうに見える女性たちが、読書会で一年以上も

かけて「死靈」を読みつぎ、読了するということに、もっとしっかりしなくては

と思いましたです。

 それにしても、すごいな。

死霊(1) (講談社文芸文庫)

死霊(1) (講談社文芸文庫)

  • 作者:埴谷 雄高
  • 発売日: 2003/02/10
  • メディア: 文庫