『図書』と「ブルータス」 3

 「図書」には川西政明さんの「批評の四十年」という文章があり、これは川西さん
がこれまで取り組んできた仕事について振り返っています。この文章には副題として、
「『新・日本文壇史』を書き終えて」とありますので、岩波から刊行されていた全十巻
の「新・日本文壇史」が完結したことを区切りにしての文章です。
 川西さんは50歳をでたばかりのころに、埴谷雄高さんから「自分のやりたいと思う
仕事は七十歳までに完成するように。八十を過ぎると駄目ですぞ」といわれたとのこと
です。当時は、これがいうところについて実感はなかったとのことですが、結果として
「新・日本文壇史」を七十一歳までに仕上げることができて、「埴谷雄高がかけた魔法
のとりこになっていたのかもしれない。」と述べています。
 七十歳までにということになると、当方に残っている時間はそんなにないが、それ
よりも「自分のやりたい仕事」というのは、なんでありますかな。
 それにしても、これまで川西政明さんと、ほとんどなじみがなくきているのが不思議
であります。
 墨一色で印刷された「図書」から「ブルータス」とうつれば、古本屋特集であるとい
うのにカラフルな写真が眼にはいってきます。当方の古本屋のイメージは黒っぽい棚で
ありますので、新しい流れの古本屋は、本の並べ方にも彩りにも気を配っているのが
わかります。
 きちんとした古書をきちんとした値付けで販売している古書店へといってみたいもの
であります。
 100の古書店にとりあげられているところで、当方の住まいから一番近いのは、
札幌にある「書肆 吉成」さんでありますね。店主は、「ブルータス」の紹介文にもあり
ますように札幌大学時代の山口昌男さんの教え子でありまして、「ユリイカ山口昌男
特集に「山口昌男先生のギフト」という文章を寄稿しています。
 先日に手にした「ユリイカ」と「ブルータス」は、吉成秀夫さんでつながりましたか。