昨日のブックオフで

 このところ本を読んでもページが稼げずで苦戦の日々であります。血沸き

肉踊るような小説を読みたいものと思ってブックオフへといったりするので

すが、なかなかこれはと思うものに行き当たりません。

 そういえば皆川博子さんのものはどうかなと思って探すのですが、これは

思いのほか見当たらずで、とくに均一本では見たことがありません。すこし

厚い文庫本を見つけたのですが、これはワンコイン予算に収まらず、次回に

訪れたときにまた検討することにしましょう。

 そんなわけで、昨日のブックオフで購入したのは、次のものでありました。

山頭火随筆集 (講談社文芸文庫)

山頭火随筆集 (講談社文芸文庫)

 

  文芸文庫が安価で入手できるときは、どのようなジャンルでありましても

買いとなります。山頭火なんてまったくなじみがないのですが、なんとなく

どのような人であるのかは知っているような人です。

 ひきこもりの反対で、漂泊托鉢の日々を過ごした人でありまして、この時代

でありましたら、ホームレスといわれそうでありますが、もちろん托鉢という

のは修行でありますね。

 どのようにして生活は成り立っているのかなと思いましたら、随筆に次のよ

うにありました。

「先年、四国霊場を行乞巡拝したとき、私はゆくりなくHという老遍路さんと

道づれになった。彼はいわゆる苦労人で、職業遍路(信心遍路に対して斯く

呼ばれる)としては身心共に卑しくなかった。・・・ 彼は数回目の巡拝で、

四国の地理にも事情にも詳しかった。もらいの多少、行程の緩急、宿の善悪、

いろいろな点で私は教えられた。二人は毎日あとになりさきになって歩いた。

毎夜おなじ宿に泊まって膳を共にしとこを並べて親しんだ。」

 これに続くところでは、このH老人と行動を共にすることが堪えられなく

なると書くのでありますが、職業遍路というのが、この時代には成立したので

ありますね。この文章は昭和13年9月のものですから、そろそろ戦時体制に

はいろうというときにも、こうした生活は可能であったということですか。

 それにしてもお大師信仰のおかげで、ずいぶんと救われた人がいるという

ことになります。最近は、その昔ほどではないと思われるのですが、それでも

他の地で漂泊するよりも、お遍路道を行ったほうがもらいにはありつけそうで

あります。

 そういえば、丸谷才一さんの「横しぐれ」は、漂泊の俳人が托鉢のように

訪ねてきて、あの人は山頭火ではなかったかというのが、小説を盛り上げてい

ましたです。

横しぐれ (講談社文芸文庫)

横しぐれ (講談社文芸文庫)

  • 作者:丸谷 才一
  • 発売日: 1989/12/26
  • メディア: 文庫