キセル読みかな

 今年のはじめに図書館から借りて磯崎憲一郎さんの「金太郎飴」をつまみ

読みしていました。ほんとのつまみ読みでしたが、新聞の文芸時評で目にして

いた文章など印象に残っているものもありまして、これは何か磯崎さんの小説も

読んでみなくてはと思っておりました。

  あれこれと物色をしましたら、磯崎作品で「ドゥマゴ文学賞」を受けたものが

あるとわかりました。しかもこの時の選者は辻原登さんでありますので、どのよう

な観点からこの作品を選んだかが気になりました。(「ドゥマゴ文学賞」はお一人

の選者さんが独断で賞を決めるものですから、ユニークな作品が受賞すること

になりです。)

 会社の規模はまるで違いますが、辻原さんと磯崎さんは商社に勤務していて、

会社での地位もそれなりになって、それから作家デビューという共通点がありま

す。会社員を経験した作家さんはサラリーマンを書かせたら、それなりに説得力

のあるものになるのではと思うのですが、辻原さん、磯崎さんもともに私小説

ような作品には縁遠いのかな。

 そんなわけで、図書館にあったドゥマゴ文学賞を受けた小説「赤の他人の瓜

二つ」を借りて読んでみることにしました。

赤の他人の瓜二つ (講談社文庫)

赤の他人の瓜二つ (講談社文庫)

 

 「群像」2011年1月号に一挙掲載となって、その二ヶ月後に単行本になった

もので、160ページほどの中編ですから、あっさりと読めるでありましょうと思って

読み始めたのですが、これが思わぬ苦戦となりました。やはり磯崎さんの世界と

は縁が薄いことだわいと思ったのですが、これは辻原さん推しの作品ですから、

なんとかして読んでみなくてはと思い直すことに。

 そんなわけで、頭のところをすこし読んでから、間を飛ばしながら、興味のある

ところを読んで最後にたどりつくことにです。ルール違反ではありますが、また

頭から読み返すということで許してもらうことにしましょう。

 そのような読み方をしますと、やっとこさで、この作品に興味がわいてくること

になりです。たぶん、頭のところからあれこれと仕込み(伏線)があって、それが

すこしかったるく感じたのでありましょう。

 さて、これからまた読んでみることにいたしましょう。

 ちなみにこの作品が受賞した第21回「ドゥマゴ文学賞」のページは以下の

ものであります。

www.bunkamura.co.jp