期限近し

 図書館から借りている本の返却期限がせまっています。図書館がお休みで

あったときは、借りっぱなしで一ヶ月くらいもそのままでしたが、業務がほぼ平

常に戻りましたら、借りた本は二週間でお返ししなくてはいけません。

 ああそれなのにまるで読むことができていないことで、一冊くらい最後まで

たどり着かなくてはということで、大慌てで走り読みすることになりです。

この本のことは、読売新聞読書欄に取り上げられている知りました。書店で

出会うことは考えられない版元でして、読売読書欄と図書館のおかげであり

ます。

国策落語はこうして作られ消えた

国策落語はこうして作られ消えた

  • 作者:柏木 新
  • 発売日: 2020/02/08
  • メディア: 単行本
 

  国策ということばは、最近はほとんど目にすることがなくなりましたですね。

最近であれば国家プロジェクトとでもいうのでしょうか。その昔は普通の会社

でも「国策パルプ」なんてのがありました。(この会社は、山陽国策になって、

その後大昭和と一緒になって、今は日本製紙ですね。ほとんど昔の名前でで

ていますのようですが、昔の名前は知られていませんです。)

 柏木さんは「国策落語」のことを、「あきらかに当時の国家の戦争遂行の意

思を肯定し、国民に協力させる意図をもった落語」といってます。

 文学、映画、音楽、美術と芸術分野において国策推進の立場から制作を行っ

た人には事欠かずでありまして、むしろそれをしなかった人を探すほうが難しい

でありましょう。

 なんといっても当時の権力者の意向に反すれば刑務所にいれられるか、飯

の食上げになるわけですから、生活を守ろうとすれば否応なしに巻き込まれな

くてはやっていけないわけですね。

 これが戦後になってから戦争責任という話になっていくわけですが、戦時下

においては、自分と国家が一つになることを求められたわけですから、疑問を

持ったとしても、それこそ同調圧力に負けることになるのです。

 この本が、この時代に発表されるのは、時代の雰囲気につながるものがある

からなのでありましょう。まだまだ、昔はもっとひどかったぞといわれそうですが、

その時代にひどいめにあった人たちは、ほんと少なくなっていることで。

 この本に紹介されている1941(昭和16)年の三代目三遊亭金馬の落語に

は次のような下りがあるのだそうです。

「我々国民はもっともっと緊張すべきだ。なのに闇取引だの色街の繁栄だのと

いうことのあるのは、まだまだ緊張味が足りない証拠。いま一段の緊張が絶対

必要だよ。そうして、いざとなれば、法律で臨む。私は国策違反はこの際反逆罪

と認めてもいいと思っているくらいだ。」

 あらま、ここのところにコロナ関連で世間を賑わせている話とずいぶんと重な

る話ではありませんか。

 国策落語は、敗戦を機にほとんど忘れられることになったとのことですが、

こういう時代がありました。この4月から始まった朝ドラの主人公といい戦時中

の生き方をどのように描くかというのは、なかなか難しいと思いますが、関係者

のほとんどがいなくなっているからといって、美化してはいけませんですね。