図書館から借りている北上次郎さんの「書評稼業四十年」を手にしてい
ます。
この本の真ん中あたりにおかれている「中間小説誌の時代」という文章だけ
は返却するまでに読まなくてはと思っています。
あとがきで、この文章のことを次のように書いています。
「中間小説誌の黄金時代があったことは、当時の編集者や作家たちが時代の
証言とも言うべきエッセイ、回顧録を少なからず残している。
では、中間小説誌を読んでいた読者たちはごこにいたのか。どういうふうに
あの膨大な量の中間小説誌は受容されていたのか。そちらの証言を書いておき
たかった。」
北上さんは1946(昭和21)年生まれでありまして、ちょうど第二期黄金時代に
あたることになります。この黄金時代を築いた作家というと、五木寛之さん、野坂
昭如さんになります。
このお二人はインパクトがありましたね。小生は北上さんよりも5学年ほど下と
なるのですが、どちらもスターにのし上がった頃のことは憶えております。
北上さんは、次のように書いているのですね。
「1960年台の後半、そこに五木寛之、野坂昭如という新時代を象徴する作家が
現れることで、私たち大学生たちもが読むようになり(ちなみに、私より二歳下の
亀和田武は予備校時代に小説現代で五木寛之の『さらばモスクワ愚連隊』を
読んだと証言している)、中間小説誌は未曾有の好況を迎える。その時代は、日
本でもっとも中間小説誌が売れた時代である。」
北上さんは、1967(昭和42)年小説新潮に三回連載された野坂昭如さんの
「好色の魂」を切り取って、製本して自分だけの本を作ったともあるのですが、
高校二年生で、下宿生活をしていた当方も、同じ下宿の五十年配のおじさんが
購読してた「小説新潮」が新聞と一緒に捨てられているのを回収してきて、それ
で「好色の魂」を読んだと記憶しているのですね。これは、そう記憶に残っている
ということであって、これについての記録は残ってなく、はっきりしないのが残念
であります。
百鬼園先生の随筆を最初に読んだのもこの時であったのですが、これは以前
にも記したことがありました。