雑誌の特大号 4

 それにしても「昭和名作短編小説」という「小説新潮」臨時増刊号は、おすすめで
あります。出血大サービスでして、1988年にはこういう雑誌が可能であったのですね。
先日にこの号に収録作品の一覧を掲げましたが、ほとんどの作品がいわゆる純文学と
して分類されるもので、それが「小説新潮」という軽い舞台にのっていますので、深
刻な顔をすることなく楽しむことができます。
 その昔の「小説新潮」といえば「百鬼園先生」の随筆が毎号連載されるような雑誌
であったということを思いだしました。
 一方の文藝春秋社の「オール讀物」の臨時増刊号はといえば、こちらは直木賞受賞
作をずらっと35篇ならべています。この増刊号は直木賞100回を記念してといいます
から、そのうちの35篇を収録となります。
 表紙には「川口松太郎から山田詠美まで」とありますが、川口松太郎は第一回の
受賞者で、山田詠美は97回だそうです。ちなみに100回は杉本章子とあります。
 直木賞を受けた人でも、どの作品で受けたかわからなかったり、あれっ芥川賞では
なかったっけと思ったりです。
 さて、収録の35人については、以下のようになります。
 第1回 鶴八鶴次郎  オール讀物  昭和9年  川口松太郎
 第3回 天正女合戦  オール讀物  昭和11年 海音寺潮五郎
 第6回 ジョン万次郎漂流記 河出書房 昭和12年 井伏鱒二
 第8回 兜首     新青年    昭和13年  大地唯雄
 第11回 小指     オール讀物  昭和14年 堤千代
 第11回 軍事郵便  大衆文藝    昭和15年 河内仙介
 第12回 上総風土記 大衆文藝    昭和15年 村上元三
 第16回 寛容    オール讀物   昭和17年 神崎武雄
 第16回 強情いちご 講談倶楽部   昭和17年 田岡典夫
 第18回 蛾と笹舟  文藝読物    昭和18年 森荘己池
 第21回 面     小説新潮    昭和23年 富田常雄
 第22回 海の廃園  文藝読物    昭和24年 山田克郎
 第23回 天皇の帽子 オール讀物   昭和25年 今日出海
 第24回 長恨歌   オール讀物   昭和25年 壇一雄
 第25回 英語屋さん 週刊朝日    昭和26年 源氏鶏太
 第26回 鈴木主水  オール讀物   昭和26年 久生十蘭
 第26回 イエスの裔 三田文学    昭和26年 柴田錬三郎
 第27回 罪な女   オール讀物   昭和27年 藤原審爾
 第31回 終身未決囚 文学生活    昭和27年 有馬頼義
 第34回 強力伝   サンデー毎日  昭和30年 新田次郎
 第35回 灯台鬼   オール讀物   昭和31年 南條範夫
 第40回 総会屋錦城 別冊文藝春秋  昭和33年 城山三郎
 第41回 鏨師    大衆文芸    昭和34年 平岩弓枝
 第43回 錯乱    オール讀物   昭和35年 池波正太郎
 第45回 雁の寺   別冊文藝春秋  昭和36年 水上勉
 第46回 蛍の河   近代説話    昭和36年 伊藤桂一
 第48回 江分利満氏の優雅な生活 婦人画報 昭和37年 山口瞳
 第55回 白い罌粟  別冊文藝春秋  昭和37年 立原正秋
 第56回 蒼ざめた馬を見よ 別冊文藝春秋 昭和41年 五木寛之
 第58回 火垂るの墓 オール讀物   昭和42年  野坂昭如
 第61回 戦いすんで日が暮れて 別冊小説現代 昭和43年 佐藤愛子
 第67回 手鎖心中  別冊文藝春秋  昭和47年 井上ひさし
 第81回 ナポレオン狂 講談社    昭和54年 阿刀田高
 第83回 かわうそ・犬小屋 小説新潮 昭和55年 向田邦子
 第97回 ソウルミュージック・ラバーズ・オンリー 角川書店 昭和62年 山田詠美 
 短編小説のみですが、それでもすごいラインナップです。ほとんど知られていない
作品もあるように思います。