先日にお土産でいただいた中村稔さんの「回想の伊達得夫」を読んでいます。
読みやすいものでありますので、すぐにでも読んでしまいそうですが、読み流して
しまうと、そんな読み方で、何を読んでいたんだと著者に叱られてしまいそうな
感じを受けることであります。
なんといっても法律を生業にしている方でありますので、一字一句ないがしろ
にせずであります。ほんとに迂闊なことは言えませんです。
そうした中村さんが「私にとっては有り難い本」といっているのは、田中栞さんに
よる「書肆ユリイカの本」であります。
中村さんが「有り難い」といっているのは、「『合本・エチュード』の奥付の写真
が掲載されており、これには『原口』の印が押捺されている。それ故、『合本・
エチュード』の印税をうけとるにさいして原口の母堂が検印紙に押印したものと
推察される。この『合本・エチュード』ならびにその後の角川文庫版の印税は
原口母堂に支払われたのであろう。」に続くのであります。
判断するためには証拠が必要でありまして、その証拠となるのが資料であり
ますね。この場合は、田中栞さんが調査して「書肆ユリイカの本」に掲載した写
真となるわけです。
原口統三の「二十歳のエチュード」のそれまでの刊本については、どうも印税
が原口母にわたっていないと思われることがあって、それに中村さんは疑問を
もっていたのですが、この「合本・エチュード」において、奥付の印から判断して
原口母に支払われたのであろうと記するのでした。
それにしても、ここまできても「支払われたのであろう」と推測でありまして、
これを「支払われた」とするためには、原口母の印税受領証を見出すすかない
のでありましょう。
法律家の文章でありますね。