なんでもありの世界に

 図書館から借りている本の二冊にはたまたまでありますが、「真実」と

いう言葉が含まれています。

真実が揺らぐ時:ベルリンの壁崩壊から9.11まで

真実が揺らぐ時:ベルリンの壁崩壊から9.11まで

 
真実の終わり

真実の終わり

 

  トニー・ジャットさんのときには、真実は「揺らぐ」でありましたが、それから10年

ほども経過したミチコ・カクタニさんになると「終わり」を迎えるのでありますね。

ミチコさんの本の原題は「THE DEATH OF TRUTH」ですから「死」であり

ますよ。(ミチコさんは、鶴見俊輔さんの「日米交換船」で一緒であった角谷静夫

さんの娘さん、USAの日系二世で、ミチコさんは漢字でどう表記するのかなと思って

検索してみましたら、当時のミチコといえば、この人という人と同じ字でした。)

 ミチコ・カクタニさんは2017年までニューヨークタイムズにいて文芸記者をして

いた方ですが、この「真実の終わり」は、一冊まるごとトランプ批判にあてられて

います。トランプは「ニューヨークタイムズ」はフェイクニュースペーパーといって

いますから、当然のことどっちがということで、ミチコさんは反論をすることになり

ます。

「何がトランプ時代における欺瞞の根底にあるのか。真実と理性は、どうしてこれ

ほどまでに絶滅危惧種と化してしまったのだろうか。差し迫ったそれらの消滅は、

私たちの公的な議論と、政治や統治の将来について、いかなる前兆を示してい

るのか。それが、本書の主題である。」

 嘘というのは意識していうからそうなのでありまして、信じていて言っていると

すれば、とんでもない話であっても、嘘をいっているという認識にはならないので

ありますよ。宗教的な信念とどうようでありまして、その認識を変えることの大変さ

であります。

 ミチコさんがいうには、次のような認識であります。

「気候変動否定派や反ワクチン主義者が捏造する似非科学、ホローコースと修正

派や白人優位主義者が捏造する誤った歴史」

 このような人たちは、とにかくめげずで強いのでありますからして、少ないけども

そうした人たちの認識を変えようとするのは、とんでもなく難しいことになります。

そして、トランプの支持者のコアにこうした人たちがいるのですから、これとの戦い

の難しさは半端でないことで。

 トランプなんて、人気途中で辞任に追い込まれるだろうと、反対派のほとんどは

思っていたでしょうが、なかなかでありまして、むしろ今のところでは反対派のほう

が決め手をかいているようにも思えます。

「真実に対する攻撃は米国にとどまらない。世界中でポピュリズム原理主義の波

が、恐怖と怒りへの訴求を理性的な議論よりも優先させている。その波は民主的な

制度を蝕み、専門知識を集団の知恵で置き換えている。」

 「真実に対する攻撃」は程度の差はあれど、この国も例外ではないのでありましょ

う。上には上があるので、この国はまだまだましだよななんて話ではないよな。