いよいよ最終章

 いつから手にしているのかわからないくらいでありますが、図書館の本で

あるのに自分のもののようにずっと手元にありです。誰も他に借りる人がい

ないというのはありがたきかなです。

 上下巻であわせて900ページくらいでしょうか、二段組でありますので、

かなりのボリュームでありまして、とにかく頭にはいってもはいらなくても、

ページをくくることにしようと、読んでいるうちにうとうととしてしまうの

ですが、そういう日々を一年をこえてやってきたわけです。(わかっても

わからなくても、とにかくページをくくるというのが大事であるようです。

先日に目にした宮本浩次さんが「失われた時を求めて」を読み終えた経験談

が参考になりました。)

 ということで手にしているのは、トニー・ジャット「ヨーロッパ戦後史」

であります。トニー・ジャットさんは、1948年生まれでありますが、若くし

て頭角をあらわし、英国から米国にわたり、2010年8月には難病のために

亡くなってしまいました。

 ジャットさんはユダヤ系で、世にいうスカラシップボーイとしてケンブリッ

ジを終えるのですが、ヨーロッパ戦後史のなかでも、歴史に翻弄される同胞

に対する思いが、切々と伝わってきます。

 最終章は、「死者の家から」と題されていますが、その書き出しは、次の

ようになっています。

ハインリッヒ・ハイネが到達さいた結論によると、ユダヤ人にとっての

「ヨーロッパへの入場券』はキリスト教受洗である。だがそれは、ユダヤ

が担わされてきた差別や孤独という遺産の相続の放棄してしまうことが近代

世界への入場対価であった1825年の話である。21世紀の初頭に完全なヨーロッ

パ人になろうとするものはまず初めに、はるかに重苦しい新たな遺産を引き受

けなけけばらならない・・・今日、ヨーロッパ人であることの証明は洗礼では

ない。それは絶滅である。

 『ホローコースト』を認めることが、われわれの現代ヨーロッパへの入場券

である。」

 現代ヨーロッパというのは、EUに代表されるものでありますが、この枠組を

アジアに置き換えてみたら、どのようなことになるのかと、かっての共栄圏の

ことなどを思い起こしてしまうことです。

ヨーロッパ戦後史(上)1945-1971

ヨーロッパ戦後史(上)1945-1971

 

 

ヨーロッパ戦後史(下)1971-2005

ヨーロッパ戦後史(下)1971-2005