昨日に続いて

 昨日に「話題てんこ盛り」と記しましたので、本日も堀江敏幸さんの新著か

ら話題をいただきです。

 堀江さんがとりあげる話題は、当方好みのものが多いのでありますね。僭越

ながら当方のほうが一回り以上も年上でありますので、よくぞこうした方面に

関心をもってくれたことと、まるで後輩のことを見るかのようになってしまう

ことです。

 今回の本に収められているコラムにも、長谷川四郎さんが少なくとも二箇所

にありまして、今どき一冊でこんなに四郎さんのことを話題にしてくれる人は

いないことです。

 話題は、ともに四郎さんの満州からシベリア時代のことでありますが、一つ

は四郎さんを補助線のように使って、ほとんど知られていない人を紹介してく

れています。

 その文章は、四郎さんがシベリアの収容所でソ連の思想をひろめるために壁

新聞の作成を計画し、それの編集者を募ったと始まります。それに四郎さんは

協力することになったが、だんだんとソ連側の締め付けが厳しくなっていって、

四郎さんの思いとはずれていくことになったとのありました。

 それに続いてです。

「ところで、四郎とともに壁新聞の編集に当たり、彼の社説を『墨痕あざやか

に』書き記したのは、横光利一の弟子にあたる松本美樹だった。学生時代、

なじみの古書店の均一棚で私はこの人の本を買っているのだが、福島紀幸『ぼく

の伯父さん 長谷川四郎物語』のシベリア抑留のくだりを読むまで、それを完全

に忘れていた。表紙に美しい裸婦のデッサンをあしらった四六版の函入り本であ

る。」

 「ぼくの伯父さん 長谷川四郎物語」は読んでいるのでありますが、もちろん

そこにでてくる松本美樹なる名前には、まったく反応することはなしでした。

この本のほかのところで松本美樹さんについて言及されることはないようで、こ

の名前に反応するのが、堀江さんでありますね。

 堀江さんは、松本美樹さんの小説集をジャケ買いするのですが、その時に、こ

の松本美樹さんがどういう人であったかまったく知らなかったとありました。

それにしても、この松本さんが四郎さんの抑留仲間であったとは、福島さんの

「ぼくの伯父さん」を読むまで知らなかったのでありましょうね。

 どこで、どのようにつながるのかでありますが、買っておいてよかったという

ことでしょうか。