いつまでかかっているのかといわれそうでありますが、藤原辰史さんの
「トラクターの世界史」をいまだに読んでいます。さすがにそろそろ終わりに
近づいていますが、たぶん、この本で当方に一番うけたのは、次のくだりで
あります。
「ヤンマーは宣伝力にも長けていた。1959年6月、『ヤン坊マー坊天気予
報』の放送がスタートする。同年二月に完成した『ヤン坊マー坊の唄』と
ともに、お茶の間に流れヤンマーのイメージアップに貢献した。
『ヤン坊マー坊の唄』の作詞は弘報課の能勢英男で、作曲は『りんご追分』
『三六五歩のマーチ』で有名な米山正夫であった。
さらに同じ作詞作曲のコンビでヤンマーはもう一つ印象深い歌を残す。
1979年に発表された、小林旭が歌う『赤いトラクター』である。
トラクターの世界史のなかで、エルヴィスに対抗できるのは、日本では
アキラをおいてほかにいない。『マイトガイ』と呼ばれ銀幕で一世を風靡した
小林旭の高めの歌声に乗って、ヤンマーのトラクターは日本中に普及した。」
このくだりは、ほとんど終わりのほうにおかれたエピソードでありますが、
この文章のなかに「トラクターの世界史のなかでエルヴィスに」とあるのは、
そのまえのところで、エルヴィス・プレスリーとトラクター(ジョン・ディア製)の
つながりのことが記されているのでした。
「エルヴィス・プレスリーは、高級車と高級バイクの蒐集家として有名だが、
実はトラクターに乗ることも趣味であった。1967年の初めにはエルヴィスが
購入したミシシッピの牧場で、ジョン・ディアの4010型に乗っていたという
記録もある。この4010型は、彼が休暇を過ごしたグレイスランドでも使われ
ており、現在グレイスランドにあるエルヴィス・プレスリー自動車博物館に修復
されたものが展示されている。」
農場などを持っていれば、トラクターを所有していても不思議ではないこと
でありませんね。2006年に当時の日本の首相が、ここを訪問しているのです
が、自動車博物館を見学したかどうかはさだかでありません。
それにしても、エルヴィスと小林旭をトラクターでつなぐのは、大瀧詠一さん
好みの話題でありまして、このところを読んだだけでも、この本はありがたい。