これは「ことば」といっていいのだろうか。戦後に生まれて育った人には、
ほとんどなじみのない「兵事係」というものであります。これが本日の新聞
朝刊「ザ・コラム」というのに見出しででていました。
「兵事係と自衛官募集」というものですが、戦前の日本の役場に兵事係
なんていうものがあったことは、ほとんどの人は知らないよな。もちろん、当方
も最近になって、役場には兵事担当の人がいたことを知りました。兵事って
なんだでありますね。
本日の新聞記事(最近は非国民新聞といわれているらしい)から引用する
と、次のような仕事をするのが兵事係であったようです。
「徴兵名簿の作成、徴兵検査、赤紙と呼ばれた招集令状の交付、出征の見送
り、留守家族の扶助、兵士に送る慰問袋のとりまとめ、戦死の告知、死者の葬
儀など膨大な仕事を担った。」
そうなんですよね。兵事係というのは、兵隊さんに関する業務を処理する担当
であったのですよ。この仕事は戦後にはなくなったことや、これの具体的な業務
の内容について、書き残した人が少ないこともあって、ほとんど忘れられそうな
役場の仕事なのです。
もうひとつ大きいのは、この関係文書の多くが「焼却された」ことによります。
焼却せよとどこかから連絡があって、その連絡があったことの記録も残すなとい
われたとありますので、このあたりのことを調べようとしますと、すぐにお手上げと
なってしまいます。なんといっても、ほとんど資料がないのでありますからして。
本日の新聞記事には、焼却を逃れた「兵事係」文書についての展示が過去に
あったと書かれています。日本全国にあったものが、残っているのが極めて稀と
なっているのですが、もちろん焼却したのは、敗戦によって敵国に、これらの文書
を押収されて責任追求されることを恐れてのことでありました。
不都合な書類は残さないというのは、この国では普通にあることでありまして、
別にこの二、三年で顕著になったわけではないですね。過去には長野オリンピック
誘致業務における会計簿が焼却されたことが話題になりましたが、とっくに忘れ
てくれていますからね。