あまり長生きしますと学者さんなどの場合は、弟子たちのほうが先に亡く
なったりしまして、ご本人が亡くなった時には、追悼してくれる人がいなくなる
のではと心配したりです。
今月10日に言語社会学者の鈴木孝夫さんがお亡くなりになったと報道されて、
これだけの人でありますからして、すぐに追悼文が新聞に掲載されるのではない
かと思っていましたが、これがなかなか目にすることができずで、そうなのかな
と思っておりました。
先日に地方紙の投書欄に60代男性かが鈴木孝夫先生に教えられたというような
内容のものがありまして、その方は肩書もなく、インテリ風の仕事についている
ようではないことから、驚いて読んだものです。(ほとんど覚えていないのです
が、このような内容の追悼文こそ、新聞の文化欄に載せるものでありましょう。)
そんなことを思っていましたら、遅ればせで昨日の朝日夕刊に慶応大学教授
井上逸兵さんが追悼文を寄稿していました。
当方と同年代の人であれば、ほとんど一度は鈴木孝夫さんの本(とりわけ有名
な「ことばと文化」)を手にしたことがあるでしょう。その射程距離はとっても
長く、しかも正確でありました。
当方はほとんど親しむことはなしに終わってしまったのですが、2019年7月に
放送となったNHK「チコちゃん」に鈴木孝夫さんが登場してびっくりとした記憶
があります。
今回の新聞に追悼を寄せている弟子筋にあたる方ですら「先生の論考を一つに
まとめることは難しいが」と書いているくらいでありまして、この時代にあって
も、読みつがれる著作を残されたのでありましょう。
鈴木孝夫さんについて、当方の記憶に残っているのは慶応医学部予科から
文転して慶応文学部で英文学専攻したことでしょうか。この時の医学部予科
というのが徴兵を遅らせるためのものであったのかどうかわかりませんが、
最近の猫も杓子も成績がよければ医学部目指すという風潮を鈴木さんはどう
見られていたでありましょう。