ブックオフでもうすこし

 先日のブックオフで入手した本の続きであります。

 一番思いがけなかったのは、次のものです。新刊であってもなかなか見かける

ことのないものが、どうしてあったのでありましょう。

古書発見―女たちの本を追って

 なんと久保覚さんの本がありました。先月に亡くなった松本昌次さんの影書房

からでたものでありました。ほんとにスケールの大きな伝説の編集者である久保覚

さんでありますが、著書は少なくて、みすずからでている「子どもに贈る本」などが

あるくらいで、これから著作に専念するかというところで急逝されたのでした。

 亡くなってから五年もたってから、亡くなる直前まで生活クラブ生協連合会の

月刊紙「本の花束」に連載していたエッセイを一冊にまとめたものです。

久保さんは著書が少ない記しましたが、あちこちに発表したものも、ほとんどまと

まることもなくにおかれているようです。亡くなったあとに遺稿集と追悼集がセット

となって販売されましたが、これも今は入手困難でありましょう。

 この「古書発見」の、最後には影書房の広告が掲載されていまして、それは

久保覚遺稿集・追悼集の刊行を伝えていました。末尾には、「本書は、限定私家版

のため一般市販はしておりません。電話・ファックス・Eメール等で直接影書房

お申し込みください。(残部僅少」とあります。

 いまほど検索をしていましたら、当時の頒価とそんなに変わらない値段で販売

されているようです。久保覚に関心があって、いまだにこの遺稿集・追悼集を購入

していないとすれば、これはぜひとも買われたしです。

 「古書発見 女達の本を」のはしがきは、生活クラブの編集担当の女性が書い

ているのですが、そこには、次のようにあります。

「一冊の本を読者に手渡すために、久保さんは数かぎりない本を渉猟し、文章に

ついてもまさに彫心鏤骨といっていいほどの力の入れようで、私たちはその姿を

間近に見て心打たれたものです。久保さんは1998年9月9日、ローザ・ルクセン

ブルグの『ロシア革命論』についての原稿を校了した翌晩、惜しくも急逝され、

本稿は絶筆となりました。そのエッセイは『21世紀への投瓶通信(上)」と題され

ていました。」

 久保さんが尊敬するローザ・ルクセンブルグについてを紹介する文章に「投瓶

通信」とタイトルをつけ、「この項つづく」と添えて、次を書くことなく亡くなって、

文字通りの「投瓶通信」となりました。

 はしがきから、また引用です。

「『古書発見』は連載中よりいくつかの出版社から刊行のお話をいただいていま

したが、久保さんは生前、そのすべてを断っていました。書物を心から愛した久保

さんの、自身の著作に対する厳しい姿勢であったと思います。」

 ということで、死後に刊行されたこの本は、久保さんのパートナーであった女性

と相談の上で一冊になったのですが、版元主は松本昌次さんですから、これは

一番良い形になったといえるのでありましょう。