昨日のブックオフで購入したものに、次のものがありました。
この本のことは、まったく知りませんでした。昨日に背表紙を見ていましたら
帯の背中のところに「幻の古書肆の物語」とあるのです。もちろん、「したよし」
といわれた古書店のことも知りませんでした。
この本の帯には、永井荷風の「古本評判記」の一節が引かれていました。
永井荷風の随筆は、最近に岩波の五冊本を購入したので、これで全文を読む
ことができるだろうと、随筆をとりだして各巻の目次をチェックです。
ところがこの随筆の目次には「古本評判記」は見当たらないのでありますね。
これは残念、ということで検索をかけてみましたら、青空文庫で全文を読むこと
ができましたです。(もうすこし時間の余裕がありましたら、ダウンロートしてから
縦書き変換をして目を通すのでしたが。)
帯に引かれている部分も含めて、「古本評判記」からの引用です。
「そも/\都下の古本屋に二種ありなぞと事々しく説明するまでもなし。
其の店先に立てば一目直に瞭然たり。一は活字本当世新刊和洋の書籍
雑著を主として和本唐本を置かず、他は和本唐本を主となし活版本は僅に
古書の翻刻物を売買す。
後者は東京書林組合と云ふものを設け行事世話人を選び春秋折々両国
美術倶楽部にて古書珍本現金即売展覧会を開く事已に年あり。本年より
何故にや両国はやめにして会場を神田明神開花楼に移したり。
即売展覧会は皆正札附きにて店売りよりは一割方高し。然し一目に幾万
巻の古書を眺め渡して同じ本にても板のよきもの悪しきものいろ/\と
見較べる便利ありて買手には甚重宝なり。
同じ古本屋にても唐本和本漢籍雑書詩歌俳諧各其の向々あり。唐本漢籍
詩集の類は神田猿楽町の村口、日本橋通壱丁目の嵩山堂、麹町三丁目の
磯部、下谷池の端の琳琅閣、本郷の文求堂なぞ専門なり。
俳書浄瑠璃本黄表紙洒落本なぞに明きは下谷御徒町の吉田なるべし。
主人咄しずきにて客をそらさず、鑑識なか/\高し。」
「俳書浄瑠璃本黄表紙洒落本」に明るいのが「下谷御徒町の吉田」と
荷風はいっています。この下谷吉田から、一字ずつとって「したよし」と呼ばれ
るようになったとのことです。
値段が安い雑本ばかりを購入している当方には、縁のない古書肆では
ありますが、古書店のご主人というのは、その分野の本についてよほどの学識
がなくてはつとまらないことであります。
なんといっても、客がまたすごい顔ぶれでありますからね。
これは、いまだに目次くらいしか見ることができていないのでありますが、
読みやすそうですので、近いうちに読むことになるでしょう。
この本の後ろのとこに、平凡社の広告がありまして、そこに平凡社ライブラリ
版 反町茂雄「一古書肆の思い出」全五巻が掲載されていました。これは
ライブラリ版がでたときに購入して、なんとか読んだことを思いだすのですが、
これを機会にあれもひっぱりだしてこようかしらん。