田中栞さんの「書肆ユリイカの本」(青土社刊)には、「蒐集事始め」という章が
あります。
「筆者が『書肆ユリイカ』の名を初めて知ったのは、平成11年2月のことだった。
『季刊銀花』編集部から『書肆ユリイカ』の紹介記事を書いて欲しい』と言われた時、
その出版物どころか、版元を興した伊達得夫の名文が収録された『詩人たち』(日本
エディター出版部、昭和46年)も持っておらず、さらに白状すれば伊達の名前さえ
知らなかったのだから無謀である。」
はじめて「書肆ユリイカ」のことを知ってから、わずか5年で「書肆ユリイカの本」
展を開くにいたるのですから、これは驚異的であります。この展示にあわせての
パンフレットには、「平成16年10月現在で、単行本158冊・雑誌45冊を所蔵、ただし
異版・異装を含む」とあります。5年間で単行本を158冊ということですから、1年で
平均31冊ですから、ハイペースです。
さらに、これから5年たった現時点でのことす。
「平成21年8月現在、筆者の手もとには古書ユリイカの本が254冊(異装等23冊含む)、
雑誌84冊ある。他に、完本を買い直したり、持っているのを忘れて買ってしまったり
した重複本が42冊、雑誌の重複が9冊ある。こうして買いまくってもまだ完揃いには
至らず、当分は蒐める楽しみを続けられそうである。」
本の蒐集をしているのは男性のほうが多いと思われますが、その人たちは家族の目を
気にしながらやっているのが普通でありまして、特に結婚されていたら、どのように
奥方のチェックをくぐるかで苦労しているのでしょう。
そういう方々とくらべると、よほどこの田中栞さんは恵まれた環境にあるのかもし
れませんが、それにしてもずいぶんなことです。
「蒐集が高じてくると、それを知っている周囲の人たちが様々な協力をしてくれる
ケースがある。たのもしい同好の士は多く、たとえば、入手した書名入りの本を
プレゼントしてくれたり、立ち寄った古書店の店頭に書肆ユリイカの本があったと
電話で知らせてくれたりするのである。」
田中さんのようなコレクターであれば、大切にしてくれて、有益に活用してくれる
はずなので、小生のところにそのようなものがあれば、自分の手元にあるよりも、
そういうコレクターのところで保存してもらったほうが、大事にしている本のためには
良いことではないかと思ってしまいます。