みみずく先生 15

 とりあえず「みみずく先生」の著作紹介のつづきをやりましょう。まるで半端ではあり
ますが「みみずく古本市」の書影まで紹介をしました。この本は、「古本市」と題されて
いるとおり、書評を中心にまとめられていまして、あとがきを見てみますと、みみずく
先生は、古本市の下足番に身をやつしています。
「いまは高度成長期とか何とか言われている極く近い過去の、その少し前くらいまでは、
<古書展><古書即売会><古本市>といったたぐいにも風情があった。いまよりは世の
中も呑気だったこともあって、かく申すこのミミズク木兎斎も、その種の人集めにはしげ
しげと通ったものである。
 ひと昔まえには多分、町会の寄り合い所に使われていたのではないかと思われるような
古びた木札を呉れた。カビが生えそうな古畳の大広間に胡座をかいて坐りこみ、棚の本な
ど一覧しただけで、すぐに平積みされた棚下の一隅の駄本類を一冊ずつ仕分けしてゆき、
とんでもない掘り出し物を見つけてゆく面白さは何にも代え難かった。ものの一時間も
いると欲しい本は欲しい本は一人で持ち帰るにやっとぐらいの結構な数になり、それを
両手に下げてヨタヨタと出口のタタキに降り立つ。下足番の爺さんが電光石火に靴をだし
てくれる。すでに顔馴染みだ。」
 この本の冒頭には、先生自慢のコレクション写真が掲載されています。これらの写真に
添えられたコメントには、次のようにありです。
「19世紀も中葉となると、イギリスの造本、装幀の世界は、その黄金時代を迎え、世紀
末の美の成熟を経て今世紀を迎える。これからその代表的なものを紹介し、愉しんで
頂こう。すべて旧都艸堂架蔵のもの原物写真であるから、その保存の度合によって写りの
善し悪しは、おのずから生じようが、かえって臨場感がでるかも知れない。」
 当方は、西洋の古書にはまったく不案内でありますが、どう見ても均一棚にならんでい
るものではないようですからして、それなりの値段がしたのでしょう。みみずく先生が、
国立大学教員の月給で、どうしてこのような古書を購入できたのかは不思議であるといわ
れていますが、書店ではみみずく先生には掛け売りするなといわれていたようですから、
金のなるきがあったわけではないようです。