移動の車中で

 本日は移動の車中でうとうととしながら、脇村義太郎さんの「東西書肆街考」

を読んでおりました。鹿島茂さんの「神田神保町書肆街考」を手にする前に、

脇村さんの本で予習をしておこうと思ったものです。

 脇村さんも神田神保町界隈の地形などから始まって、江戸時代のお屋敷の状

況が説明されて、維新後にお屋敷は学問所などに変わっていったとありました。

当方はまるで歴史に弱いので、そうなのかと初めて知ることが多いことです。

 明治の元老 西園寺公望駿河台に居をかまえて、古書街を歩くところが、

印象に残りました。西園寺公は、十年のフランス留学を終えてから大学で教鞭

をとったのちに、外交官となったり文部大臣となるのですが、その存在感は別

格であったようです。

 その元老のお散歩スタイルです。

駿河台に落ち着いた後、月明温暖の夜、書生帽をいただき、ステッキをもって

神田の古書街で書物を漁る侯の姿はしばしば人目にふれた。

 さらに明治四十年代、西園寺侯が首相の印綬を帯びた時、竹越三叉などの斡旋

で、主要な文士を、ここに招いて会合を催した。」

 時代も制度も違うのですから、比較はできないものの、最近の元老なような人物

に、このような雰囲気の人はいるでありましょうか。