<女流>放談とはね

 図書館から借りている「<女流>放談」を手にしています。なんとなく

違和感を感じる書名でありまして、どうしてこういうタイトルになってのであり

ましょう。この本のどこかを見れば、このタイトルにした理由が書いてあるの

かなと思いつつ、まずはそれをチェックです。

 著者によるまえがきにも、あとがきにも書名についての言及はありません

です。たぶん、この本で「放談」というタイトルに触れているのは、一ヶ所だけ

で、それは著者ではありません。

 これに収録された11人の作家のうち、現存されているのは刊行が決まっ

た時点で4人、それから刊行までに石牟礼道子さんが亡くなられて、田辺

聖子、金井美恵子中山千夏の三人が健在となります。

 このうち金井美恵子さんは、年齢が近いせいもありまして、対話がうまく

いっているように思いました。そうして、金井さんだけが「遅れてきたインタ

ビューへの補記」というのを寄せています。

 これが興味深いのであります。

「(三十六年という)長い時間よりも奇妙に感じたのは、インタビューに答え

ている私の言葉づかいというか話し方で、じぶんの話し方とは大変違う印象

でしgた。やや幼い内容はともかく、日本語でインタビューしたキルシュネライト

さんがドイツ語で起した原稿を、ドイツ語に堪能な日本人が訳したのではない

かという印象を受けたほどでした。」

 36年もたっていますから、その時の発言とかその話口調が自分のニュワン

スでないと金井さんは感じていて、しかしすでに亡くなってしまった方々とあわ

せるために、そこは手を入れることはなく、明らかに勘違いなどをのぞいては、

そのままOKをだしたとありました。

 このドイツ語に堪能な日本人が訳したのではないかというのは、たぶんこの

対話がキルシュネライトさんの、パートナーである日地谷周二が関わっている

ことを示唆しているのでしょうか。そういえば、この点については、あとがきに

書かれていました。

「このプロジェクト実現の最大の貢献者として、私は夫の日地谷周二をあげた

いと思う。彼は残っていた三つの記録のテープ起こしをしただけでなく、文字化

された記録を音声と比較して整理編集し、長いエッセイを含む関連文章のすべ

てを日本語に訳してくれた。」

 こう書かれているあとがきも、キルシュネライトさんがドイツ語で書かれたも

のを周二さんが日本語に訳したものとありますので、この本はお二人の共作と

もいえるもののようです。

 そのように受け取ると、「補記」で金井美恵子さんが「しかし『放談』という

戦前的男性文化のジャーナリズム用語が、このインタビュー集のタイトルには

使用されているのです・・・。」とあるのは、納得がいくことです。

この日地谷周二というお名前で検索をかけてヒットする方と、この夫さんが同じ

方であるとしたら、金井さんの「戦前的男性文化」というのは了解で、書名を

つけたのも、この周二さんであるのかな。

 あとがきの追記に、こう書かれています。

「この『あとがき』は、私の夫、日地谷周二が、2017年秋に日本語に翻訳して

くれたものである。そこに自ら書き込んだ『2018年3月』という日付を、周二は

生きて迎えることはなかった。このプロジェクトは、2018年2月16日に逝去し

た夫の遺言でもある。」

 作家との対話ではなく、まるでちがったところを面白がってしまっていて、対

話は、これからつまみ読みします。

〈女流〉放談――昭和を生きた女性作家たち

 インタビューして、これに収録されなかった三人の作家さんは、次の方々

であるとのこと。森茉莉有吉佐和子富岡多恵子

 富岡については、「鮮烈な印象を残した」と書いているので、これが収録さ

れなかったのは残念ですが、力量の差が大きかったろうか。