これを機会に

 先日にブックオフで購入した「惜櫟荘だより」を読むことになりです。

長期にわたって「図書」に不定期連載となっている佐伯さんの「惜櫟荘」も

のですが、いまは連載の第二部ともいえる「惜櫟荘の四季」というタイトルで

26回目を数えていました。岩波書店佐伯泰英さんの結びつきには、ほんと

意外感ありです。

 この「惜櫟荘」シリーズの第一部はこの建物を入手し、それの大規模改修

するのが軸で、それに過去のスペイン時代の思い出が挟み込まれていきます。

佐伯さんは、売れないカメラマンとしてスペインでフリーの生活を続けるので

すが、その時にであったのが永川玲二さんであり、堀田善衛さんであります。

 今時に永川さんの思い出を書くのは、佐伯さんくらいでありまして、この本

を読む楽しみの一つにもなります。「図書」に連載時に、これは話題としてい

ますので、これは、その時記事を見てもらうことにしましょう。

vzf12576.hatenablog.com 堀田善衛さんのスペインからの便りものにも堀田さん宅の居候で、雑用係

であった佐伯さんは登場するのでありますが、佐伯さんから見た堀田夫人が

これには描かれています。

「堀田夫人はふだん寡黙で、独りレース編みなどで静かに時を過ごしておら

れた。だが、一度夫人の勘気に触れると老練な編集者も出版社の重役も

容赦なく怒鳴りつけられ震え上がった。

 作家堀田善衛のマネージャーでもあるのだからある意味では致し方ない、

時には激怒するふりをするときもあったろう。ともあれ、夫人の逆鱗に触れた

編集者のだれかが言い出したか、『逗子のライオン』と呼ばれていた。」

 先月に堀田さんの娘さんによる「ただの文士」を図書館より借りて読んだ

のでありますが、このなかには、スペイン時代の堀田夫婦に言及するところも

あるので、そこのところに佐伯さんは登場するかなと楽しみにしていました。

 たしか一ヶ所にSさんとかあったくらいで、ほんとほとんど登場しないといっ

てもいいくらいで、これが堀田善衛さんの書くものと印象の違うところです。

 どうやら、娘さんのほうはほとんど接点がなかったのでありましょう。

ただの文士――父,堀田善衞のこと