年明けとほぼ同時に読みはじめました「ニュルンベルグ合流」の最後の
ページになんとかたどり着きであります。この厚さでありますので、読むことが
できるかなと思っていましたが、そんな心配はありませんでした。ナチの戦争
犯罪についての法律議論のところは無理に深く読まないで、著者の家族の
歴史について読むことになりです。
著者は1960年生まれで、調査を始めたときにはすでに亡くなっている
祖父(1904年生まれ)の足跡を追うことになりです。資料が亡くなっているの
は日本も外国も同じでありましょうが、それを丹念に拾い集めながら、関係者
の話を聞き取り、公文書館などを調査して形を作っていきます。
これは歴史の本ではないのですが、それでもこれをおろそかにしますと、ヨタ話
に堕してしまいます。
この本がいろんな専門家から評価を受けているということは、そこのところ
がおろそかになっていない証拠でありましょう。
訳者のあとがきのところに、次のようにありです。
「人権は人種、文化的背景などとは無関係だと強調する彼は、世界の一部、
一部の民俗、社会の一部が特権を得る状態を嫌悪し、『我々』と『彼ら』という
分断を危険視する。
こうした立場を取る彼は、英国のブレグジットに愕然とし、社会の分断に力を
得たトランプ政権を避難する。歴史的に国際法という分野の二大推進力で
あった国々(英国と米国)が揃いもそろって『国際的』でなくなりつつある現象
を、彼は国際法学者として懸念しているのだ。」
この時代に、こういうきちんとしたノンフィクションを読むというのは意味が
あることと思うのですね。今も世界のあちこちで人々への迫害は続いておりま
してナチズムは悪いことばかりではないといった大物政治家は、この国にも
おりましたが、そういう認識の政治家がきわめて重要なポストに居座り続けて
いるというのに、なんの不思議も感じなくなっているのは感覚が麻痺している
からでありましょう。