「図書」9月号から 2

 今月の岩波「図書」は、本を話題としたものがいくつかありまして、これが興味深
いことです。
 昨日にちょっとあげた細見和之さんの「ジョン・レノンプルードン」もその一つ
でありますが、さらに本そのものを話題としているものが二つもありです。
 一つは、「書物と出会う」という山口信博さんのものとなります。この山口さんと
いう方はグラフィックデザイナーで、折形デザイン研究所主宰とあります。
折形とはなんであるかですが、その折形に興味を持つことにいたったのが古書店でた
またま眼にはいって、手にした「包之記」という和綴の刊本だったとのことです。
全ページに図版がはいるので、これを見るとおおよそ察しはつくものの、そえられて
いる文字が読めないので、この文字をなんとか読みたいと思ったというのが、この文
章の書き出しでありまして、それからこの本を読み解くための勉強を始めることにな
ると続いていきます。
 図書館へといったりして調べたら、自宅に折形を特集した雑誌とか書籍があること
が分かって、それを探し出してきて、むさぼるように読んだとあります。
その二冊について、次のように書いています。
「共に1978年に刊行されていました。二冊ともカバーデザインが美しいのでジャケ
買いをし、中味をほとんど読んでいませんでした。軽薄だと笑われてしまうかもしれ
ませんが、そういうところがデザイナーにはあります。もちろん内容に惹かれて本
を購入することもありますが、デザインが良くないとちょっとガッカリした気持ちを
持ちつつ読むことになります。」
 もちろん、当方は軽薄だと笑ったりすることはありません。
1978年の本でデザイナーさんがジャケ買いしたものは、なんであったろうです。
「その一冊が『銀花』という、主に工芸をあつかっている雑誌で、杉浦康平デザイン
による『白い折形』の特集号でした。もう一冊の書物は、『折形の礼法』という
山根章弘先生の著書で、杉浦康平さんのお弟子さんである辻修平さんのデザイン
でした。」
 ジャケ買いといえば、杉浦康平さんデザインという時代がありましたですね。
その昔、けっこう値段が高かった「銀花」も、最近はとっても安く入手することが
できたりで、安いと買ってしまったりします。ここで筆者が取り上げている「銀花」
を、小生も架蔵しているだろうかと、「銀花」がおかれているところをチェックして
みましたが、残念ながら、この巻は持っていないようであります。

折形の礼法―暮らしに息づく和紙の美学

折形の礼法―暮らしに息づく和紙の美学

 それにしても、古書店でたまたま入手した和本と、このように決定的に出会って
しまうことがあるのですね。