月はかわって

 先月末に手もとに届いた新潮社「波」8月号には、「わたしの選んだ『新潮文庫
5冊」という特集があります。
 新潮文庫では、夏に「新潮文庫の100冊」というのを書店などで展開するのですが、
それにかかわらずで、「わたしの5冊」を選ぶというのが、今回の特集です。
 ちなみに選んだのは次の5人で、選をするにあたっての切り口がそえられています。
 角田光代  すっと気温を下げる
 堀江敏幸  夏祭りをクールダウンする
 朝井リョウ 学生時代の夏休みに読みたかった
 宮内悠介  科学する五冊 
 平松洋子  生と死の近さを読む
 
 もちろん、ここであがっているものには重複はありませんです。切り口としては
学生時代の夏休みにというのが、一番わかりいいかもしれませんね。学生時代の夏休
みに読むといえば、長編小説でありましょう。ここで朝井さんは、「楡家の人びと」
をあげていました。この作品は元版も新潮社で、文庫も新潮ですから、ここであげる
にふさわしい一冊ですね。
 そういえば、最近はあまり新潮文庫を買うことがなくなっているなと、これは4年
ほど前に、新潮文庫百年を話題とした時にも記しておりますので、その状態は、もう
だいぶん長く続いています。
 4年前の時に、記憶に残っている新潮文庫として、あげたのは大江健三郎の「性的
人間」と「赤い鳥傑作選」でありました。当方の高校から大学にかけてのころは、
大江作品といえば、新潮文庫であったのだよな。
 そのときにあげたものをはずして、ノンジャンルで新潮文庫でしか読むことのでき
ない「わたしの5冊」をあげてみるかな。手にした順でいってみます。
  チップス先生さようなら
  ペスト
  百鬼園随筆
  笹まくら
  宣告
  日本の喜劇人
  きまぐれ美術館
 5冊でおさまらないし、まだまだいれたいものがありです。「笹まくら」は元版が
河出で、最初の文庫は講談社だから外しだな。「日本の喜劇人」も晶文社が元版だか
ら、これも外そう。そうすると5冊だが、なんとなく忘れているものが大きいような
気がすることで。日本の小説が「宣告」だけっていうのもおかしいな。そんなことを
いっていたら、まるで終わらないことです。