50年たつと

 片付けをしておりましたら、新潮文庫解説目録がでてきました。当方の手もとにあ
る一番古いものとなります。入手したのは亡父でありますが、いつからか当方のもの
となっていました。亡父の小学校(もちろん昭和初め頃の)の同級生が本屋さんを
していまして、そこのゴム印をおした春陽文庫のカバーがかかっていました。
 1967(昭和42)年5月のものですからして、当方は高校生でした。
 この時代の新潮文庫は、今とは違って古典となるようなものしかラインナップされ
ませんでしたので、この文庫目録には大家といわれる人の作品が中心で、若手の作品
は、ほとんどはいっていませんでした。
 さて、この50年前の目録に名前が掲載されていて、いまも健在な人はどなたかいる
だろうと思って、ページをめくってみました。
この結果でありますが、日本文学のところに解説付きで文庫が紹介されているのは、
わずかに小説家二人で、目録巻末に新刊として紹介されているのが一人の、二つあわ
せても三人のようです。
 この三人は、若くしてデビューした作家と、長命な作家さんであるといえば、誰の
ことか思いあたりますでしょう。
 作家は石原慎太郎大江健三郎瀬戸内晴美さんでありました。
石原さんは「太陽の季節」「亀裂」「完全な遊戯」というタイトルで三冊、大江さん
は「死者の奢り」「われらの時代」「芽むしり仔撃ち」の三冊。
瀬戸内さんは「夏の終わり」の一冊。
 それにしてもよくも50年も現役作家というのは、すごいことであります。大江健三郎
さんといえば、新潮文庫でありまして、まさかそのあと断絶するとわね。