ずっと雨が降り続いて、気温も上がらないことから、本日も終日自宅にひきこもり
の生活となりました。なかなか本を読むこともできずで、トイレで読むためにとって
あった里見とん随筆集を手にしておりました。
- 作者: 里見トン,紅野敏郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1994/04/18
- メディア: 文庫
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里見とんさんは1888(明治21)年に生まれて、1983(昭和53)年に亡くなったので
すが、その前半生は日清戦争からはじまって、太平洋戦争に敗れるまで、10年ごとに
やってきた三度の戦争ということで、上流階級のおちこぼれであった里見とんさんに
は、生きづらい時代でありました。
先の大戦に負けて、それから20年ほど経過した時に発表されたのがこの「戦争と
わたし」となります。
本日は、この中から話題をいただきです。
「この頃の若い人たちは、やたら戦争反対だとか、徴兵なんて飛んでもねえ話だとか。
それは重々ごもっともなことで、こっちだって子供の時分からそういう考えで、嫌っ
て嫌って嫌いぬいてきたんだけど、実際には十年ごとにやって来た三度の戦争を、そ
れぞれの時点において体験しているんだ。今後は一切、戦争には関係しない、という
憲法も出来たことだし、そうあってほしいよ。だけど、世界中にたくさんの国家とい
うものがある以上、国と国との間、民族の間で、絶対に戦争しない、喧嘩しないで
済むだろうか? それは願うべきことには違いないけど、ちょっと無理なんじゃない
かと思うな。・・・・
それだから、ただ戦争反対だ、徴兵はいやだ、いやだって、駄々をこねるみたいな
ことを言ってたって、なんの役にも立ちゃアしない。誰だって争い事はいやだし、
みんな命は大切なんだ。戦争なんていやにきまってるんだ。真実そう思うんなら、ここ
で若い人は勿論、政治家でも誰でも、なんとか違った観点から、じっくり考え直さなく
ちゃいけない、というに僕は思っているんだが。
それじゃ、お前の考えはどうだって訊かれたって、僕はそういうことは至極不得手
な人間で、いくら考えたって纏りっこない。」
1970年において「この頃の若い人たち」というのは、当方の世代でありますね。
そして、それから50年近くもたって、いまだに当方は駄々っ子のようであります。