天気晴朗 気温6.5度

 本日はお天気がよろしで、おひさんがでていてあたたかく感じたのでありますが、
気温はそんなにあがらず最高気温は6.5度であったとのこと。まあおひさんがでていた
ので、その間は寒くはありませんでした。
 昨日から引き続きで富岡多恵子さんの短編を読んでおりました。

芻狗 (1980年)

芻狗 (1980年)

 富岡さんの小説は、何作か購入していて読んでいないのですが、この作品について
はまったく承知していませんでした。この作品集を購入してから「当世凡人伝」の
すぐあとくらいにでたものと知りました。収録の作品が書かれたのは1978年から80年
にかけてのものですから、当方はどのような作品を読んでいたのだろうか。
子どもが生まれたばっかりの頃で、本は買ってもあんまり読むことができていなかっ
たかな。
 作者の富岡さんは40代半ば頃でありまして、充実した時代であったのでしょう。
この作品集のタイトル「芻狗(すうく)」は、ほとんど目にすることのない言葉で、
検索をかけてみましたら、「《老子》,《荘子》天運篇などに見える〈芻狗〉は快気
祈願や厄払いのために神前に供えるわら細工の犬のことで,周代から三国時代ころま
で行われたらしく,犠牲の代用品といえる。」とありました。
 作品集のタイトルになっている芻狗(すうく)」は、その後講談社文芸文庫に収録
されることになりましたので、富岡さんの代表的な小説作品の一つとなるのでしょう。
波うつ土地・芻狗 (講談社文芸文庫)

波うつ土地・芻狗 (講談社文芸文庫)

 そんなこんなことを思いながら読みますと、これがまことに不思議なものでありま
して、こういう作品は男性作家んは書けないよなと思いましたです。
「栄吉がなぜわたしの誘いを受けて警戒心もなくやってきたか、よくわからなかった
が、それを考えてみようとも思わなかった。わたしはただ、知らない他人、といって
も、好感をもった知らない若い男性が、簡単に自分の中へするりと入ってくる瞬間だ
けを楽しみにしていた。・・・栄吉のようにわたしと性行為をした若い男性が、それ
をしたことによって、なんらかのいやな思い、感じの悪い思いをもつことをどこかで
期待してはいた。よくも知りもしないかなり年のいった女が誘ってきて、金もださず
恋愛でもないのに性行為をした、ということで若い男性の中に得体の知れぬ小さな
暗い空間が生じて残るのを、わたしはひそかに期待した。ところが、栄吉は、そうい
う期待にまったくこたえぬようなところがあった。それが、思いがけずわたしの自虐
的なよろこびを誘った。」
 主人公は「かなり年のいった女」でありますが、同じ相手とは二度はしないという
ことで、次から次へと手当たり次第に対象を求めるのですが、好感をもってはいるも
のの恋愛感情というようなややこしいことにはならず、ひたすら「ひたすらするりと
入ってくる瞬間」を楽しみにです。
 なんともはや実験的な生き方であることで、こういう主人公のなかに、自分を見出
すことはできるでしょうかな。