本日手にした本 3

 高田宏さんの「編集者放浪記」からの話題です。

編集者放浪記 (PHP文庫)

編集者放浪記 (PHP文庫)

 高田さんは、大学を終えて就職するのですが、そのときにマスコミを中心に入社
試験を受けて、軒並み落ちて、最後に当時まだ小さかった光文社の試験に合格、晴れ
て編集の仕事につくことになります。
 出版社によっては採用がオープンになっていなかったりして、つてをたどって採用
試験に臨むということもあったようです。高田さんの推薦状を書いてくれた人には、
百名山」で有名な深田久弥さんがいらしたとあります。この他に名前があがってい
る方としては、「サンデー毎日の名編集長であった辻平一さん」という方があり、
光文社の試験を受けるようにすすめてくれたのは、この方であったとのことでした。
 高田さんの文章には、この時の光文社の入社試験の問題がでているのですが、これ
は、それまで受けたどの入社試験とも違ったとありました。
「はじめに原稿用紙が一冊ずつ配られた。二百字詰五十枚綴じだっただろうと思う。
それを使って六本の原稿を書かされた。古い手帖に課題を控えていたので、それを
写す。
1 戦後の大衆娯楽の種々相を論じ、それについての所見を述べよ。  十枚
2 わが父(母)を語る     五枚
3 旧師へ卒業を知らせる手紙  五枚
4 最近感銘を受けた本について感想を述べよ。 五枚
5 現代の尊敬する人物とその理由を述べよ。  五枚
6 愛読する新聞とその特長、及びどういう欄或いは記事を好んで読むかを記せ 五枚
 試験はこのほかに簡単な英文和訳と、漢字の読み書き、それにお添えもののように
すこしだけ常識問題があったけれども、要するに一日がかりで六本、三十五枚の原稿を
書かせたのだった。あとで聞いたことだが、これでは採点の労力が大変で、翌年からは
こんな試験ではなくなった。」
 この年、光文社ははじめて試験で社員を採用することにしたのだそうです。それが
このような試験となったのでしょう。
 このあとに続いて、高田さんが、これにどのように回答したかのメモが記されてい
ました。
 当方の目を引いたのは、「現代の尊敬する人物」に対する回答です。
「深瀬基寛氏を挙げて、この人の自由闊達、無邪気の美しさを言い、いかにすばらしい
酒飲みであるかをかいた」
 ここで深瀬基寛さんの名前がでてくるとはです。高田宏さんは京都大学仏文科を卒業
しているのですが、深瀬さんとは、どうしてでしょう。