なんとか読了

 数日前から読んでいた佐野真一さんの「甘粕正彦 乱心の曠野」をなんとか読み終え
ました。

甘粕正彦 乱心の曠野 (新潮文庫)

甘粕正彦 乱心の曠野 (新潮文庫)

 当方が知るところの甘粕正彦という人物は、大杉栄を殺害し、その後満州に渡って
満州映画協会の理事長となり、満州自死したということでありました。特にこれまで
甘粕さんについて記されている本を読むこともなしでありました。
 この本の前半は甘粕さんの大杉事件への関わりから軍法会議のやりとりが書かれ、そ
の後、恩赦によって刑を終えてからフランスへと渡る期間をはさんで、満州時代が描か
れることになります。
 甘粕正彦とは、どういう人間であったのか、彼は大杉栄らを殺害したのかというのが、
テーマでありまして、甘粕正彦のご家族も含めて、非常にたくさんの人に面談をし、資
料にあたって、その人物像を明らかにし、事件への関わりを検証していきます。
 その結果は、この本の帯にありますように「従来の甘粕像をことごとく覆す衝撃の大
河ノンフィクション!」となるようですが、当方は「従来の甘粕像」というのが良くわ
かっていないのですが、佐野さんが序章に記しているところの「冷酷非情で狂信的な天
皇崇拝主義者」ということになるのでしょうか。
 それじゃ、この本を読んでみてどう思ったかというと、佐野さんのたくらみにまんま
とはまってしまいました。
「甘粕にとって満映は、自分の理想(王道楽土と五族協和という満州国の)を実現する
小さな王国だった。日本人スタッフには及ばないものの、中国人スタッフの給与を倍以
上に引き揚げ、中国人を蔑視する言動を禁じた。」
 もちろん甘粕さんは単純な正義の味方ではないのでありますが、接した多くの人から
尊敬を集めた人であったということはわかりました。
 それにしても、ノンフィクションというのはずいぶんと手間がかかることであります。