そういうことなのか

 出版社のPR雑誌というのは、自社の新刊などの案内とそれに関連した記事などが掲
載されるのが一般的でありまして、雑誌などを持たない版元にとりましては、この
PR誌に連載したものを、のちほど加筆などして単行本として出すというのも珍しいこ
とではありません。
 出版社PR雑誌で珍しいのは、自社新刊の案内が落ちることでありまして、当方のと
ころに届いたものが落丁でなければ、新潮社「波」9月号は、たいへん珍しい号となっ
たようです。
 例月巻末におかれる新刊案内は、単行本、雑誌と続き、最後の見開き2ページが文庫
の案内となっています。
そこで9月号を見てみましたら、この号は真ん中にクレストブックの特集がはさまれて
いますので、いつもよりページ数は増えているのですが、最後の見開きページのとこ
ろに新潮文庫の案内(9月刊行のラインナップ紹介)がないのでありますよ。
 これを見て、9月に新潮文庫新刊がでないのかと思うほど、うぶではないのでありま
すが、どういう理由があって、こんな広告を落とすようなページ割りになったのだろう
と思ったことです。
 なにか重大な事情があったかなということで、一番に頭に浮かんだのは新刊として
出そうと思っていたものが、ある筋の逆鱗に触れ、刊行できなくなったというもので
あります。しかし、最近の新潮社が、そんな虎の尾を踏むような出版をすることは
ないなであります。
 そうこうしていましたら、本日の新聞朝刊に新潮文庫の広告がでていまして、そこ
には「緊急文庫化」の文字があり、いつもの月よりも大きなスペースを割いて、
ベストセラー小説が文庫となったとありました。どうやら、この小説の文庫化が、
「波」9月号の広告に影響を与えたようでありますね。
 この緊急文庫化のベストセラー小説は、当方には縁のない出版でありますが、小説
の作者が向ける批判は、当方にも向けられているのでありましょうね。