めでたく完走せり

 消灯時間を過ぎた病室で読書灯をたよりにブルースト「失われた時を求めて」(吉川一義訳 岩波文庫)の最終ページにたどり着きました。お恥ずかしくて読了なんていえませんが、ヨタヨタとしながらも、72歳5ヶ月で完走できたことに、健康で気力もまずまずでここまでこれたことに、今は亡き両親や読書中に励ましてくれた知友人たちに感謝であります。

 昔から長い小説好きであった当方にはプルーストは遠い存在でありました。新潮文庫の目録にはあるものの、ほとんど品切れでしたし、手を出しちゃいけないような感じを受けました。

 結局は、新潮文庫では一冊も求めることがなく、新訳がでるのを待ったのであります。

 待望の新訳は筑摩世界文学全集に何冊かで収録ということで、これの巻がでるごとに買い揃えました。完結まで、何年かかったでしょうね。筑摩世界文学全集といえば、昔は三段組、プルーストはどうだったでしょう。読んでも読んでもページが進まない。

 あの版では80数ページ、紅茶にマドレーヌのところまで読んで先に進めずでした。

井上訳は、そのあとちくま文庫に収録され、これも買い揃えたのですが、この版でも読むことができずてした。井上先生、申し訳ありませんですね。

 そうこうしていましたら、岩波文庫からプルーストの新訳がでるということで、これは購入しなくてはと、新刊がでましたら行きつけの本屋で購入しておりました。

 岩波文庫新刊が入荷する書店は、経営破綻して、当方の手元には9巻まででストップとなりました。 

 70歳に手が届こうところに、一念発起して、これまで放置してあった岩波文庫版て、プルーストにとりかかることにです。つまみ読みでペースあがらず、一年にせいぜい3冊がいいところで、これは5年くらいかかるぞ、後期高齢者になる前にはよまなくちゃと思いながら、この場でも状況報告をしておりました。

 当方の畏友は、岩波文庫版を激オシで、新刊がでるのが待ち遠しかった。できれば一気に読みたかったと励ましてくれました。

 二十歳のころからの友人は、岩波文庫で8巻までいったが、難病が悪化して先に進むことが出来ないと告げて、その後連絡が絶たれました。

 そんななか背中を押してくれたのは、家人が教えてくれたエレカシ宮本浩次さんのプルースト読破の秘訣でありました。宮本ファンの家人のためにも、

これは宮本方式でとなりまして、すこし展望がひらけました。

 この春には孫娘に頑張ってねとお手製の文庫カバーとしおりをもらい、それを励みに残り巻数を減らすことにです。

 そして、今回の突発性難聴による入院生活です。

この機を逃しては一気読みできないぞとのおもいで、3冊を持ち込み、めでたく完走となりました。

 プルーストの小説と、それを読もうと思ってからの当方の時間が交錯する幸せな体験になりました。

訳者の吉川さんにならって、ありがとうプルースト、ありがとう皆様です。

 本日の病室からはよいお月さまが見えてまして、こういう夜に完走です。


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