読み返し中

 先日に一度筋を追いながら読んだ佐藤正午さんの「月の満ち欠け」を、読み返しし
ています。
 二度目となる今回は、主に伏線となっているところに注意しながらです。
この小説は筋の流れと時系列が入り組んでいて、さらっと読んだ時には、何がどのよ
うに関係しているのかわからないような仕掛けがありです。一度通読して、そのあと
頭まで戻って、すこしずつ繙いていきますと、なるほどそういうふうにからみあって
いたかです。
 三度目に読み返すとしたら、登場人物を拾いだしてきて、それの見取り図を作って
みるのもいいかなと思っています。まあそうすることで、この小説の理解が深まるわ
けではないのですが、そうすることで作者が読み手を攪乱しようとしていることから
抜け出ることができるかもしれません。
 小説はウソの積み重ねでありまして、この作品の最後にも参考文献リストのあとに、
「本作品はフィクションであり、実在の個人、団体とはいっさい関係ありません。」
とわざわざ書かれていますので、安心して作者のウソ話にだまされるとよろしいかな。
 主人公が在籍している会社名とか出身大学などはすべて伏せられているのですが、
そのなかで、ただ一つ主人公が卒業した高校の名前だけが実在する高校のものであり
まして、この高校の卒業生に知人がいる当方は、そうかあの学校は県内でも有数の
進学校であるものなと、主人公とその就職先に興味がわきました。このような会社に
勤務したら、当方の住む街に出張で来ていても不思議でないなと思ったことです。
まるっきり筋とは関係のないところで、大人読みを楽しみました。

月の満ち欠け

月の満ち欠け