岩波「図書」7月号から

 本日に岩波「図書」7月号が届きました。早速、なかをのぞいてみました。
 このところの「図書」編集長は佐藤正午さんの担当する坂本政謙さんでありまして、
岩波で佐藤正午さんの本を企画するのですから、昔々の岩波らしさがないことです。
 当方が坂本政謙さんのことを知ったのは、光文社文庫にはいった「ありのすさび」
を読んでのことでした。

ありのすさび (光文社文庫)

ありのすさび (光文社文庫)

 この「ありのすさび」が佐藤正午さんと坂本さんが一緒に取り組んだ仕事であると
思っていましたら、そのまえに「きみは誤解している」という短篇集を担当し、岩波
からだしたのだそうです。これが2000年のことといいますから、岩波と佐藤正午さん
の付き合いは、もうかなりになります。
 「ありのすさび」は、岩波からでた佐藤正午エッセイシリーズの一冊目で、文庫化
されたときには、解説を坂本さんが担当して、「まず、この本の成り立ちについて
お話したいと思います」と書き出しています。この坂本さんの文章は、佐藤正午さん
のエッセイ集制作裏話が記されていて、たいへん興味深いものです。
 ということで、「図書」7月号を見てみましたら、英文学者阿部公彦さんが書いて
いる「作家と胃弱」というエッセイで佐藤正午さんの文章と作品を話題としていまし
た。朝日新聞の土曜別刷りに掲載の「作家の口福」の佐藤正午さんの文章から、最新
作「月の満ち欠け」と「小説の読み書き」というエッセイ集に話が転じていって、岩
波と佐藤正午さんの蜜月をお祝いするようなものとなっています。 
 そう思っていましたら、編集後記である「こぼればなし」の一番後ろに次のように
ありました。
「本号の責了間際、朗報が舞い込みました。四月に刊行された佐藤正午さんの『月の
満ち欠け』が、第157回直木賞の候補作にノミネートされました。小社刊行の小説が
候補に挙がるのは、第107回でノミネートされた清水義範さんの『柏木誠治の生活』
以来、25年ぶりのこと。注目の選考委員会が開催されるのは、7月19日です。」
 素直に喜んでいるのが伝わってきますが、めでたく受賞されたらご本人よりも、
担当の坂本さんのほうが喜びそうでありますね。