ほとんど異端かな

 昨日に引き続き岩波書店編集者で佐藤正午さんを担当している坂本政謙さんの文章
から話題をいただきです。
 当方は岩波「図書」はずっと昔から購読していて、それで新刊のチェックをしてい
るのですが、2000年頃に佐藤正午さんの小説がでていたことは、まったく記憶に残っ
ておりません。そもそもその時に佐藤正午さんという作家を認識していたかどうかで
あります。
 光文社文庫版「ありのすさび」への坂本さんの解説から引用です。
「僕が佐藤正午さんとはじめて仕事をさせていただいたのは、2000年5月に刊行された
『きみは誤解している』に遡ります。この短篇集は、全編が競輪という特殊は世界に
財をとったものであったにもかかわらず、また競輪やギャンブルといったものがもっ
ともそぐわないだろうと思われる版元から刊行されたにもかかわらず、いくつかの
好意的な書評とともに多くの読者にも迎えられ、予想よりもはやく重版の機会に恵ま
れることになりました。」
 上に引用したのは、解説の冒頭におかれたくだりです。
 佐藤正午さんのデビューは1984年でありまして、2000年というと中堅作家の仲間入
りの頃でしょうか。そういう時期に、佐藤正午さんの競輪世界に題材をとった小説集
を企画するのでありますね。それまでの佐藤正午さんは集英社、光文社、講談社
角川というところから本をだしているわけですが、岩波から本をだしませんかという
話が来た時には、驚かれたことでありましょう。
 岩波書店といえば、売れるのは文庫と新書で、学術書を中心に売れなくてもいいの
だという感じの出版ラインナップでありますが、それでも2000年当時にはだいぶん会
社の雰囲気はかわっていたのでしょう。このままではやばいぞという感じがあって
椎名誠のものが岩波新書に入ったりしました。
 それでも椎名のものは、「図書」に連載のものが新書で一冊になったものですし、
その時の椎名誠知名度が高かったので、特に異論はでなかったでしょう。
それと比べたとき、佐藤正午さんの「きみは誤解している」という小説集は、よくも
企画が通ったと思います。
 この作品が重版にこぎつけなくては、その後のエッセイシリーズもないことで、
坂本さんにとっての「きみは誤解している」は、編集者勝負の一冊という感じが
いたします。

きみは誤解している

きみは誤解している

 検索してみましたら、「きみは誤解している」の文庫本には、坂本さんが解説を
寄せているということで、これは小説をというよりも、解説を読んでみたくなりま
したです。