先日の本屋にて

 先日に訪れた本屋で購入した本などの話であります。
 手にすることが出来なかった佐藤正午さんの「月の満ち欠け」については、昨日に
話題としましたが、それじゃ何を買ったのかですね。
岩波書店に敬意を表してというわけじゃありませんが、岩波のものが多くなりました
です。

 岩波文庫今月の新刊です。このところ岩波文庫には思いがけない詩人のものが次々と
入っています。まど・みちおさんは、それほど意外な感じはしませんけども。これは
谷川俊太郎さんが編集とあります。岩波の個人詩集シリーズの編集顧問は谷川俊太郎
さんのようであります。
 この詩集をパラパラとのぞいてみましたら、伊藤英治さんが手掛けた理論社版全詩
集がベースにあることがわかりました。全詩集は手が出ないが、この文庫でエッセンス
を味わうことができます。
まっぷたつの子爵 (岩波文庫)

まっぷたつの子爵 (岩波文庫)

 カルヴィーノによる「われらの祖先三部作」の一冊でありますね。河島英昭さんの
解説をみても、あわせて読みたい他の二冊についての言及がなくて、これはちょっと
残念なことです。(ぱらぱら見た限りではないですよね。)
 もちろん、他の二冊は「木のぼり男爵」と「不在の騎士」であります。
当方が読んだのは、いずれも最初にでた版本でありまして、70年初めのころで、それ
から読み返したのは「木のぼり男爵」だけであります。これは白水社ががっちりと
抑えていて、なかなか文庫化はむずかしいようです。
語る藤田省三――現代の古典をよむということ (岩波現代文庫)

語る藤田省三――現代の古典をよむということ (岩波現代文庫)

 これも今月の新刊となりです。法政大学 藤田省三というと、法政野球部の有力OB
がいまして、その昔に法政 藤田省三というのを目にしたら、はてどちらのと思った
ものですが、もちろん最近はそんな心配がないどころか、藤田省三とは誰ですかという
感じでありましょう。
 ひどく歯ごたえのある藤田さんの著作ですが、当時の学生を相手に語っているので
あれば、すこしは読む事ができるのではないかと、冒頭におかれている「現代とは
どのような時代か」というものを、書店で立ち読みしてから購入を決めました。
 なかなかわかりにくい文章ではありますが、その一部を引用です。
「一面的なお仕着せの『目』であるテレビという空間は、それ自身の自己イメージで
自己運動を起こして増殖し、一面性だけがいよいよ強化されてしまう。それに対して
私たちは、時間の中を自由に移動することによって、即ち歴史を勉強することによっ
て、私たちの時代を客観化しなければ、逆に十分に私たちの位置というものもつかめ
なくなってしまうだろう。」
 「現代とはどのような時代か」は1969年4月14日法政大学での講義の一部だそうです
が、まるで最近の状況のことを語っているように思います。当時と比べて、悪くなって
いても、良くはなくなっていないと思うことです。