古老の話を聞く

 本日は古老の話を聞く機会がありまして、足を運んでおりました。
 北海道にある王子製紙水力発電所で生まれて、学校にいっていた数年間だけ発電
所を離れていたものの、卒業後戻り、発電所勤務の方と結婚して家庭をもち、50歳に
なる頃まで、そこにお住まいでした。
 たまたまその発電所に関する古い写真がでてきて、それに写っている人とか状況に
ついてご存知の方はいないだろうかということから、その古老の女性にいきあたった
ことになります。大正13年お生まれですが、御年93歳でありますが、記憶がしっかり
としていて、昭和15年くらいからの写真にうつって人物について、ずいぶんと解き明
かしてくれました。
 その発電所で生まれた方に畔柳二美さんがいらっしゃいますが、年齢的にはひとま
わりほど畔柳さんが年長で、しかも途中で畔柳さんは他の場所に移動していますので、
子供のころに直接には面識はないのですが、山の発電所という狭いコミュニティでの
ことですから、畔柳さんの生家について、良くご存知で、発電所ものの作品には、
実在の人物をモデルとするような人物が登場する言われているとのことでした。
 そんなことを耳にして、帰宅してから畔柳二美さんの「山の子供」を手にしてみる
ことにしました。たとえば、次のようなくだりです。
「上の社宅の主任の高田さんであった。五十五六の高田さんは、声が大きくて、誰を
でも叱るので有名なこわい小父さんであった。・・
 別の発電所へ引越した私の一家は、出張続きであった父とも共に暮すようになって、
姉弟たちも、すくすくと伸びていった。父は、もとの発電所の高田さんよりは物事に
理解があったし、高田さんよりは気の優しい人間であった。この発電所では、父は、
高田さんのように、社宅の人々をどなりちらしたりは、しなかった。皆は、父を人格
者だと言った。」
 本日に写真を見ていたときに、この作中の高田さんのモデルの方が何枚かにうつって
いたのですが、もちろん発電所で一番えらい人でありまして、その方は長くその発電所
に勤務して、天皇と呼ばれていたとのこと。なるほどな。
 そのほか畔柳さんが思いを寄せていた人をモデルとしで、「姉妹」の登場人物が
生まれたとか聞きましたが、それはいまだチェックができてなしです。
 なるほど、古老の昔の話を聞くのは楽しいかなです。